100周年を迎えた山本被服が30年間作り続ける白い作業着
話を白い作業着に戻しましょう。ホンダの白い作業着にはもうひとつ特徴的なことがあって、それは横にポケットがないこと。上着には胸ポケットがあり、ズボン(ワンピースのつなぎも含めて)には尻ポケットがありますが、上着にもズボンにも横ポケットがありません。それは、横ポケットがあるとポケットに手を突っ込んだまま歩いて転ぶことがないように、との考えからです。
ちなみに、生産のラインで働く従業員は、ワンピースのつなぎではなくツーピースの上下分轄式の作業着を着用していますが、これはラインでの作業中に、何かに引っ張られたときに引っかかった方だけが脱げて、体全体が引っ張られないように、との考えからだそう。
現在、ホンダの白い作業着は、ほぼ100%を静岡県は東部の清水町に本社を構える山本被服が納入しています。創業から今年でちょうど100周年となる山本被服が、初めてホンダに作業着を納入したのは1993年のことで、今年でちょうど30周年になります。
同社では、ホンダから示された見本を参考に、強度(耐久性)を増しながら袖に腕を通しやすく、またズボンも履きやすくすることを考えて上着の袖やズボンの脇と股下を巻き縫いとしています。これには3本針ミシンを使っていて耐久性も一層高く、ホンダの担当者も「山本被服さんの作業着はとても長もちします」と太鼓判を押していました。
山本被服では基本的なデザインを変えることなく必要に応じて手を加えていて、「最近はスマートホンの大型化に対応してポケットを大きくしたりしています」とのこと。
要するに、基本デザインを変えることなく改良改変を続けてきた、ということのようです。言ってみればこれはもう、低床バックボーンフレームに4サイクルの単気筒空冷エンジンを搭載し、大型の樹脂パネルでレッグシールド一体式のエンジンカバーを被せた、ホンダの代名詞ともなったスーパーカブのよう。しっかりした基本があり、それを時代やユーザーからのリクエストに応じてアジャストする。
ホンダのスーパーカブや白い作業服のように、こうしてホンダは75周年から100周年を目指し山本被服は次の100年を目指すのだろう。