国も自治体もライドシェアの基本を理解してる? 新しいサービスなのに既存の仕組みの中に組み込もうとする日本の悪しき慣習 (2/2ページ)

日本と海外では大きく異なるライドシェアの認識

 日本の行政当局は、既存のシステムのなかに新たな形のビジネスを押し込もうとしてくる。カーシェアリングも結果的には、「カーシェアリング的レンタカーサービス」として分類され、“わ”ナンバー扱いとなり、通常のレンタカー事業の派生扱いとなっている。

 ロシアの首都モスクワでもカーシェアリングサービスは盛んだが、乗り捨ては完全に自由。道路端に使用済みのシェアリング車両が駐車されているのはよくあることだが、利用したい人がその車両が乗り捨てられているのを確認して、自分が登録して乗り込み使っている。東京都内などでもお馴染みの「シェアリング自転車」とほぼ変わらない使い方だ。基本的に借りた営業所に返却するレンタカーと同類ではない、まったく独自のサービスとして展開されているのである。筆者はこれはとても便利だなと思い見ていた。

 日本はクルマ関連に限らず、がんじがらめで規制がかけられているケースが多い。そして、世界がデジタル化を進め、さまざまな革新的サービスが登場しても、日本国内では多くの規制が邪魔をしてなかなか普及させることができない。

 ライドシェアもまさにそのとおり。消費者も行政の規制が厳しすぎるので、何か問題が発生すれば行政当局の責任問題を追及する(流れとしては当たり前)という流れが定着しており、欧米やその他の諸外国のように、自己責任という話を持ち出すとたちまち炎上してしまうことも多い。

 諸外国でもそこまで自己責任を負いたくないという人はライドシェアサービスを利用しないし、利用しても事故リスクの低い短距離移動にしか使わないなど、使い分けができているので、ただちにタクシーに深刻な悪影響が出るというわけではない。

 アメリカにおけるライドシェアサービスドライバーによる利用者への性的暴行事件が多いのが心配との話もあるが、ある鉄道の駅では「東口のタクシーは運転手さんが怖い」と、わざわざ西口のタクシーを利用する若い女性が多いという話があるので、日本のタクシーが絶対的な安心感を得て利用されているというわけでもない。

 ライドシェア導入より、「タクシー業界の規制緩和を」という話もあるが、タクシーに乗っていわゆる「1メーター」と言われるような短距離の目的地を告げると、ドライバーに舌打ちされたり嫌味を言われることがまだまだある状況では、短距離移動で利用したくても嫌な思いはしたくないので手控えた人も多いはず。

 ライドシェアは原則論でいけばドライバーは副業で従事することになり、諸外国で見る限りは空いた時間に従事することになる。したがって、利用距離の長短にはあまりこだわらず、短距離移動にも使いやすい。日本でも短距離移動では便利な移動ツールになるはずである。

 ただし、ライドシェアで自家用車を使いだせば、運転頻度は多くなるので事故発生リスクも増してしまう。そのまま一般乗用車と同じ任意保険では、任意保険料全体の値上がりにもつながるので、ライドシェア用任意保険の設置などが必要となるだろう。

 政治家の先生は、海外へ行っても、もちろんライドシェアなどは利用しないだろうから、どんなものなのか実感が沸かないのかもしれない。ライドシェアを既存のシステムに新しいサービスとして半ば押し込めようとしているようにも見える。

 いまのライドシェア導入検討の動きを見ていると、日本の社会がデジタル化に乗り遅れている現状の根深さと言うか、その原因がどこにあるのかといったものが見えてきたように思えた。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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