なんか速そうな「R」とか「RS」! 「レーシング」とか「スポーツ」かと思いきやまったく違う意味のクルマもけっこうあった (2/2ページ)

「R」や「S」の文字はクルマ好きのワクワクを引き出す

 しかしながら、さすがにスズキの軽ハイトワゴンの「ワゴンR」については、レーシングという風に捉える人はかなり少ないだろう。

スズキ・ワゴンR(6代目)のフロントスタイリング

 都市伝説的に、当時の社長であった鈴木 修氏が車名決定会議において「ワゴンもあーる」でいいじゃないかと発言したという話も広まっているが、スズキの発表によれば『REVOLUTION(革新・画期的)とRELAXATION(くつろぎ)の頭文字であり、「軽自動車の新しい流れを作る新カテゴリーのクルマ」で「生活にゆとりを与えるクルマ」というふたつの意味を込めました』ということだ。

 たしかに、1993年にデビューした初代ワゴンRは軽自動車の価値観を変えてしまうほどの革新的なモデルであった。まさに名は体を表すの好例だ。

スズキ・ワゴンR(初代)のフロントスタイリング

 冒頭、ホンダの「タイプR」について触れたが、じつはマツダにも複数のモデルにまたがって「スピリットR」という限定車と特別仕様車に使われたネーミングがある。

 2002年に発売されたRX-7(FD3S型)最後の限定車と、2011年から2012年にかけて発売されたRX-8最後の特別仕様車に「スピリットR」の名前は使われた。

マツダRX-7 スピリットRのフロントスタイリング

 いずれもマツダのアイデンティティといえるロータリーエンジンを積むスポーツモデルの“最後”を飾る名前だが、そこに込められた思いはレーシングではなく、「リターン」であり「ロータリー」であるという。

マツダRX-7 スピリットRのエンブレム

 2023年に開催されたジャパンモビリティショーにおいて、マツダは2ローターエンジンを積んだプラグインハイブリッドのコンセプトカー「アイコニックSP」をお披露目した。いかにも走りそうなルックスゆえに「SP」が示しているのはスポーツの意味かと思ったが、マツダの人に聞けば「スポーツ、スピリット、スピード……いろいろな解釈をしてもらってかまいません」という。

マツダのコンセプトカー「アイコニックSP」

 その意味では、作り手の思いを尊重しつつ、ユーザーが愛車の名前に使われているアルファベットが何の略称なのかを独自に意味づけて楽しむというマインドも、多様性の時代にはふさわしいのかもしれない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

新着情報