S耐に出てるトヨタの水素カローラは走りながらCO2を回収してるだと!? 超画期的な技術の中身とは (2/2ページ)

直近のCO2対策としてはEVの普及が大切

 メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウス会長は、「できることと、企業が投資すべきこととは区別する必要がある」と語っている。技術開発において出来たことが、そのまま量産車で実現できるかどうか? そこには別の量産技術としての開発が不可欠である。量産化とは、単に数を作れるだけでなく、消費者が購入できる適正な価格で販売されなければならない。つまり、原価低減だ。なおかつ、脱二酸化炭素の取り組みは将来必要なのではなく、いま直ぐ実施されることが求められている。そのためには、一刻も早い排出ガスゼロの電気自動車(EV)普及が喫緊の課題だ。

 そもそも水素が適正価格で実用化できるかも不確実だ。再生可能エネルギーにより水を電気分解することが世界的に信じられているが、再生可能エネルギーは自然に左右され、その自然がすでに甚大な災害をもたらす不安定な状況にある。また、電気分解する水に何を使うかという議論が行われていない。いま世界人口の40%が水不足に直面し、カリフォルニア大学の教授も淡水の減少を警鐘している。水を飲料として用いるか、水素を作るために使うかの議論が間もなく起こるだろう。

 EVの利点は、人間が生きるうえで不可欠な水や食料と衝突せず、しかも移動手段としてだけでなく電力需給の安定というエネルギー保障に貢献できることだ。いまの環境問題は、クルマとしての解決だけでなく、社会の安心を実現する一翼を担う対策でなければならない。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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