この記事をまとめると
■スーパー耐久に出走しているトヨタの水素エンジン車にはCO2を吸着するフィルターが装着されている
■走りながら空気中のCO2を削減するという画期的な技術は脱炭素社会に向けた大きな一歩
■だが水素エンジンが今すぐの解決策となることは難しいと考えられる
川崎重工が開発した技術を搭載
11月に富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久(通称S耐)に出走したORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptが、二酸化炭素(CO2)を吸着するフィルターをエアクリーナーボックスに装着して出走した。これは、川崎重工が開発している技術をエンジン車に適応した事例となる。
川崎重工は、閉鎖空間となる潜水艦や航空機内のCO2を除去する技術開発を行っている。固体吸収剤を用いたフィルターと、有効活用できずにいた廃熱とを組み合わせることにより、CO2の除去を行う技術である。
まず吸着材で空気中のCO2を吸着し、その後、排熱を利用してCO2を吸着材から取り出し、保管する。実験では、石炭の燃焼ガスからCO2を吸着・除去し、次に、低温蒸気を使って吸着したCO2を分離することを行った。その結果、大型プラントでの可能性が確かめられ、脱二酸化炭素に貢献する技術として前進した。
この技術を応用した今回のレース車両は、液体水素をエンジンで燃焼し、そのエアクリーナーボックスにCO2回収フィルターを設け、併設したタンクに分離したCO2を貯める。このため、単に燃料を水素に頼る脱二酸化炭素だけでなく、空気中のCO2を削減する効果が得られることになる。自動車メーカーが、次世代技術の可能性を探るクラスでのレース参加で、新たな技術が試された。
今年9月の世界平均気温は、+1.47℃ときわめて高い上昇となり、早急の対策が求められている。あらゆる手段を講じて脱二酸化炭素し、CO2を削減することは待ったなしだ。
したがって、このレースで使われたCO2分離策があっても、エンジン車がこれからも安泰という短絡的な話ではない。