環境問題よりも一般ユーザーは日々の生活が大切! BEVはユーザーがメリットを感じなければ普及しない (2/2ページ)

BEVにしてもそれほどメリットを感じない日本

 そんなアメリカでも、空港など公共の施設ではキャッシュレス専用の飲料水などの自動販売機が目立ってきている。先日ロサンゼルス国際空港を利用したら、空港内に無人コンビニができていた。さらに駐車場の料金決済をネットで事前精算や駐車場にあるQRコードをスキャンしてカード決済するようにするなどし、利便性向上とともに、有人料金所を廃止する駐車場も増えている。

 つまり、諸外国ではキャッシュレス決済の普及で目に見えて生活が便利になっているのだが、日本は治安が良いこともあり、街なかにはお札まで使える自動販売機がたくさんある。とくに不便を強く感じることもなく、かえってキャッシュレス決済のほうを面倒に感じるケースも多い。

 諸外国でもあるのかもしれないが、システム障害で利用できなくなるトラブルの多発や不正決済への懸念も含め、システム上の信用問題から、逆にリスクと感じる人もまだまだ多い。とりあえず諸外国ほど、飛躍的にキャッシュレス決済自体が便利という印象はない。そのためポイントをたくさん付けて普及促進しているようにも見える。

 BEV普及については、すでに日本ではHEV(ハイブリッド車)がかなり普及している。BEVのようなゼロエミッションではないものの、昨今のガソリンスタンド減少の背景のひとつにHEVの普及による給油頻度の減少というものがある。普及数からいけば、BEV普及が進みながら低年式のガソリンやディーゼル車といった、環境性能の悪いクルマがたくさん走る欧州よりは、地球環境への負荷は日本のほうが少ないようにも見える。

 日本においてもBEVへの消費者の興味は高いのだが、日系ブランドでのラインアップがあまりに少ないことや、そもそも日本の発電は化石燃料による発電がメインなので、BEVに乗ってもゼロエミッションではないので乗る意味があまりないと考える人も多い。

 充電インフラもまだまだ不足している。さらにBEVに関する情報不足も目立つ。「『400kmしか走らないのに、1時間も充電にかかるのでは……』といった認識の人も日本ではまだまだ多いです。しかし、世界的には航続距離600kmとか、20分ほどで8割急速充電できるといったことはスタンダードになろうとしており、航続距離では1000kmへ向かおうとしていますが、やはり普及が遅れているのか情報のアップデートもなかなか進んでいないのが現状です」とは事情通。

 つまり、キャッシュレスと同じように「BEVにしてもそれほどメリットを感じない」というのが日本社会の現状ともいえる。日本でもHEV普及の課程では、地球環境などという「エコロジー」ではなく、ガソリン代節約という「エコノミー」が注目され、普及を後押ししてきたように見える。

 欧州はともかくとして、アメリカや東南アジアなどの新興国では高止まりするガソリン価格に耐え切れずにBEVへ乗り換えるケースも目立っている。また、新興国では大気汚染対策という側面で政府は普及を積極化させている。日本では高まるガソリン価格に政府は補助金の投入を続けており、いまでは南カリフォルニアよりガソリン価格が安くなっているといわれている(それでも高い)。

 ちなみにアメリカでもとくに新車販売の市場規模の大きい南カリフォルニアでは、高止まりするガソリン価格を受け、それまでは関心の薄かったHEVの需要が高まってきている。

 日系ブランドのBEVラインアップが出遅れていると言われて久しいが、とくに消費者が利便性をなかなか感じないなかでは、ラインアップが増えないのは、日本国内に限れば市場原理からしても仕方ないのかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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