この記事をまとめると
■地方には数店舗程度しか展開していない小規模なディーラーが存在する
■一部店舗では設備の老朽化や後継者不足により閉店してしまう場合もある
■生き残っている店舗では、独自のセールスやサービスを展開して他店と差をつけている
小規模な販売店は独自の戦略で生き残っている
クルマの販売会社の規模はさまざまだ。店舗数が1〜5箇所程度から、100箇所を軽く上まわる法人まで、さまざまな販売会社がある。
資本形態も同様で、メーカーの直営とメーカー資本に頼らない地場の販売会社に大別される。トヨタはもともと地場が多く、直営もあったが、2020年から2021年にかけて地場へ次々と譲渡した。
また、軽自動車については、販売会社と契約を結んだ修理工場や中古車店が、業販契約を結んでクルマを売ることも多い。これらの業販店では、複数のメーカーを扱うこともある。人口が少ないために新車の販売店が進出しにくい地域では、業販店が新車の販売からメンテナンス、保険まで幅広いサービスを行っている。
規模の小さな販売会社には、譲渡して大手と経営統合したり、営業自体を終了するケースも見られる。話を聞くといろいろな理由がある。
「1台当たりの粗利が減るなど経営が難しくなった」「店舗や修理工場が老朽化して建て直すには多額の投資が必要」「近年は販売促進ツールのデジタル化や充電設備の設置など投資が増えてきた」「経営を任せられる後継者がいない」という具合に、切実な理由が聞かれる。以前と同じように営業している販売店でも、経営母体が変わっていることは珍しくない。
しかしその一方で、店舗数が1〜5箇所の小さな販売会社なのに、個性化を図って順調に経営している場合もある。たとえばホンダ車を扱う小さな販売会社では「軽自動車は買いに来られたり乗り替えるお客様に売るだけで、積極的な販売活動はしない。その代わりシビックやステップワゴンに力を入れている」と言う。理由は1台当たりの粗利が軽自動車よりも多いためで「従業員が受け取る販売手当も、価格の高い普通車は軽自動車を上まわる」と説明された。
この販売店では、ホンダのメーカー直営の販売会社を競争相手と考えていた。近年では国内で売られるホンダ車の約40%をN-BOXが占めて、そこにほかの軽自動車を加えると50%を上まわり、フリードまで含めると70%に達する。「こういった状況だから、直営とは逆にシビックやステップワゴンに力を入れると、競争関係に陥らない」と述べた。
また、別のホンダの販売店では、旧車を含めて、シビックタイプR、NSX、S2000などの整備を重視する。メンテナンスやチューニングの能力も高く、スポーツモデルのユーザーが多い。これらの車種は、定期的に入念なメンテナンスを受けることが必要で、パーツ装着のニーズもある。メンテナンスとアフターサービスで、売り上げが高まるわけだ。
以上のように、規模は小さくても、個性化や工夫によって地元密着型の手堅い商売をしている販売会社は少なくない。