安くて軽くてスパルタン! ポルシェ356で誕生した「スピードスター」はやっぱり特別な称号だった (2/2ページ)

アメリカ市場に向けたスポーティで軽量なオープンモデルを用意

 そして1954年、ポルシェは新たなボディタイプとして「スピードスター」を356のモデルバリエーションに追加設定する。

 クーペやカブリオレよりもやや低価格で、かつスパルタンなオープントップモデルがアメリカ市場で売れる可能性があると進言されたポルシェは、より低いデザインのフロントウインドウ(レース時などにはそれを取り外すことも可能だった)やバケットシート、最小限の折り畳み式ルーフを備えたスピードスターを即座に投入。

ポルシェ356 スピードスターのフロントスタイリング

 じつはポルシェは、1952年にコクピットの側面を深くえぐって、やはり着脱式のフロントウインドウを装備したアメリカ・ロードスターを20台限定生産した経緯があり、その成功からもスピードスターがアメリカ市場で広く受け入れられることには確信を持っていた。

 356スピードスターは、いわばこのアメリカ・ロードスターの進化版ともいえるモデルであるわけだが、その車重はほかの356シリーズと比較して約70kgも軽かった。搭載エンジンは1500と1500Sの2タイプのみが選択可能で、組み合わされる4速MTは、3速と4速がさらにクローズドレシオ化され、最高速こそ170km/hに抑えられてはいたものの、0-100km/h加速は17.4秒という記録を残している。

ポルシェ356 スピードスターのエンジンルーム

 サスペンションではフロントアクスルの強化が目立った改良点で、新たにトーションバースタビライザーを装着したことでオーバーステアの傾向は若干弱まった。

 1955年、ポルシェはそれまでの通称356プレAに大幅な改良を施し、新たに356Aを発表。スピードスターの生産は1958年まで継続されるが、この年に誕生したコンバーチブルDにその市場を譲ることになる。

ポルシェ356 コンバーチブルDのフロントスタイリング

 その弛まぬ努力の結果、スポーツカーとして非常に魅力的な存在へと進化を遂げた356スピードスター。ポルシェにとってこのスピードスターの称号が特別な存在であるのは、後に911シリーズでその名を掲げるモデルが復活を遂げていることからも明らかだろう。

ポルシェ911 スピードスターと356 スピードスターの並び


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

新着情報