この記事をまとめると
■トラックの高速道路制限速度を引き上げようという案が出ている
■目的は物流の効率化や人材不足対策
■しかしこの案にはいくつか問題点が挙げられる
トラックの高速道路制限速度の引き上げが検討されている
その昔、大型トラックはキャブの上端に速度に応じて点灯する、緑の3連ランプが取り付けられていた。これによって外からトラックの速度が掴みやすいため、トラック運転手は派手に飛ばすことができない環境に置かれていたのだ。
しかし、過酷な労働環境とモラルの低下か、高速道路において大型トラックによる重大な交通事故が多発。これを受けて警察庁と国土交通省は、2003年より大型トラックの最高速度を制限するスピードリミッターの導入を決めたのである。
これによって大型トラックの最高速度は90km/hに制限され、高速道路上の制限速度は80km/hとなったのだった(大型トラックなどの後部には速度抑制装置付というステッカーが貼られている。これは90km/hで作動するスピードリミッターが装着されているという意味だ)。速度が低下すれば、前方の渋滞に気づくのが遅れても、急制動によって速度が落ち、最悪の場合に衝突しても損傷の軽減が見込める。
さらに、2013年には衝突事故軽減ブレーキ、いわゆる自動ブレーキの搭載を義務化して、ドライバーのミスを車両側がサポートする構造が取り入れられている。
しかし、その間にも物流の取扱量は増大を続け、ドライバーの負担は増すばかり。働き方改革に伴う労働環境の改善もあって、残業時間に制限が与えられたため、2024年度からは物流がパンクすることは必至だ。
そのため、物流の効率化や人材不足対策に、再び大型トラックの高速道路制限速度を引き上げようという案が出ている(決定ではなく案として検討している)。80km/hを100km/hに引き上げ、3割近いスピードアップをするので1日の取扱量が増やせる、ということを目論んでいるのだろう。