元祖軽商用EVがパワーアップしつつもなんと価格ほぼ据え置き! 三菱が「ミニキャブEV」へ車名を変更し12月21日より販売スタート (2/2ページ)

スペックアップしつつも価格はほぼ据え置き!

 大は小を兼ねる的な発想でみると、ミニキャブEVの180kmという航続距離は物足りないと感じるかもしれないが、それは早計。開発陣によればこのスペックは、12年間販売してきたなかで、数多くのユーザーとコミュケーションしてきた上で見えてきた必要な航続距離を満たしたものだという。じつはミニキャブEVは急速充電口もオプション(5万5000円)となっているのだが、こちらも多くのフリートユーザーは普通充電しか使わないため、むしろ「急速充電をなくしたぶん安くなったほうがうれしい」という声が多いという。

三菱ミニキャブEV

 もちろん官公庁などを中心にV2H機器に接続したいので、そのためにCHAdeMO急速充電口が必要という声もあるそう。オプションの急速充電がV2Hに対応しているのは言うまでもない。

 ちなみに、バッテリーがエンプティに近い状態で、最大出力電圧400V、最大出力電流60Aの急速充電器(24kW)を利用したケースでは、約42分でバッテリー充電率を80%程度まで回復させることができるという。とはいえ、ほとんどのユーザーは一晩(約7.5時間)あれば満充電まで回復させることのできる普通充電(200V・15A・3kW)を利用するだろう。そのほうが充電コストとバッテリー劣化を抑えられるからだ。

三菱ミニキャブEV

 さて、なによりおどろくのはバッテリー総電力量がこれだけ増えても価格はほとんど据え置きとなっていること。

 ミニキャブEVのグレード構成は、従来同様にCD 2シーターとCD 4シーターの2種類で、メーカー希望小売価格は以下のようになっている。()内にミニキャブ・ミーブの価格を記しておくが、2シーターについては完全に据え置きなのことがわかるだろう。

■ミニキャブEVメーカー希望小売価格
2シーター:243万1000円(243万1000円)
4シーター:248万6000円(245万3000円)

 しかも、新生ミニキャブEVが進化したのは電動パワートレインだけではない。いまや商用車であっても欠かせない先進安全装備、先進運転支援システム(ADAS)についても最新レベルのシステムが与えられている。

三菱ミニキャブEV

 具体的な機能としては衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報機能、自動ハイビーム、誤発進抑制などサポカーSワイドに対応した内容。システムの核となるセンサーは、フロントの単眼カメラとミリ波レーダー、そして前後の超音波ソナーだ。

三菱ミニキャブEV

 ミリ波レーダーを、フロントグリル内側に新設することもあって、フロントバンパーは意匠変更。あわせて前後バンパーともに白いボディについては素材色を活かすことで無塗装としている。これはコストダウンの手法でもあるが、SDGs的な社会ニーズからすると無駄な塗装をしないというのはポジティブな改良といえる。

三菱ミニキャブEV

 軽商用バンの基本性能として重要なラゲッジスペースについては、従来モデルではスペアタイヤが室内に置かれていたが、それをパンク修理キットに置き換えることでラゲッジを有効に利用できるよう改良しているのも地味ながら見逃せないポイントだ。

三菱ミニキャブEV

 ちなみに、あまり代わり映えしないルックスについて開発陣に質問したところ、「お客様からスタイルを変えてほしいというリクエストはほとんどなかったので」という回答だった。フリートユーザーの気持ちになれば、すでに運用しているミニキャブ・ミーブと新しいミニキャブEVを並べたときにあからさまに異なっているよりも、ほとんど違いがわからないくらいのほうが嬉しいということなのだろうか。

三菱ミニキャブEV

 また、新型ミニキャブEVでは2シーターのリヤガラスなどをパネルへ置き換えることでコストダウンと軽量化を図っているが、こちらもユーザーからのリクエストだったという。まさに長年の経験によって熟成された仕様、それがミニキャブEVといえる。

 これまで三菱が独占的だった軽商用EVのマーケットに各社が参入することで、2024年は軽商用EV元年という見方もあるが、こうして進化したミニキャブEVを見ていると、”一日の長”というのは確実にあるだろう。

 商品力アップに伴うミニキャブEVへの改名は、軽商用EVの中心プレーヤー的存在でありつづけるという強い意思を感じさせられる。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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