近未来を背負うパワーユニット
じつは、自動車の動力源として見た場合の水素燃料エンジンは、まだ開発途上にあり公開できない技術もいくつかあるが、この窒素酸化物の排出低減を可能にする技術として、水素燃料による発電プラントとして川崎重工業が開発したDLE(ドライ・ロー・エミッション)燃焼器が現在の自動車用に対して1歩先んじた存在となっている。
ただ、発電用として水素のみを燃やすのではなく、LNGとの混合燃料というかたちで使用され、当然ながら炭素成分を排出することになる。ゼロエミッションではなく、ローエミッションプラントというというのが正しい捉え方だ。
さて、水素は燃焼速度が速く燃焼温度が高くなるという側面があり、燃焼温度が高いと窒素酸化物の生成量が増えるという特徴がある。この窒素酸化物の生成量を抑えるため、燃焼温度を下げる対策が採られることになる。ガソリン機関でいえば、EGR(Exhaust Gas Recirculation=排気再循環)をかける手法となり、水素燃料エンジンでも同様の手法が有効だと考えられるが、具体的な低減技術については、まだ確認がとれていない。
いま、世界的に問題視されているのは、地球温暖化に直結する二酸化炭素の排出で、燃料/燃焼に炭素が関わらない水素燃料エンジン車が、内燃機関であっても大きく有望視されてるのはこのためだ。しかし、燃焼という行程を経ることで、窒素酸化物が生成されることも事実である。
ただ、排出する窒素酸化物の削減が可能なことも事実であり、その排出量は微少なレベルにまで追い込まれている。近未来を背負うパワーユニットとして、水素燃料エンジンの持つ可能性は大きい、と考えてよいだろう。