65年ぶりに帰ってきたフランスのレーシングカーブランド
そのドラージュが衝撃的な復活劇を演じてみせたのは、それは2019年11月7日、フランスのリヨンで開催されたエポックオートショーでのこと。ここで企業家のローラン・タピーによってドラージュ・オートモービル社の再始動が発表されたのだ。
それとともに存在が明らかにされたモデルが「D12」と呼ばれるハイパーカー。それはF1マシンをさらに進化させたかのような、きわめて先進的で斬新なメカニズムとボディスタイルを持つモデルだった。
ちなみにこのD12にはロードユースを目的とした「GT」と、さらにトラックユースにフォーカスした「クラブ」の2バリエーションが用意され、その生産台数はトータルで30台。注目の価格はシャシーナンバー「1/30」がオークションで決定される予定だが、残りの29台は税抜で200万ユーロ(約3億2400万円)という設定になるという。
D12のスタイルは、やはりF1マシンをさらに進化させたものと表現するほかはないだろう。前後のタイヤはエアロダイナミクスの向上を目的にフェンダーで覆われ、同時に戦闘機からインスピレーションを得たというボディのシェイプは鋭く、そして前後のウイングやタンデム配置で2名の乗車を可能にするキャビンに乗り降りするためのキャノピーなど、確かにそれを裏付けるディテールは、このD12のあらゆるところに見ることができる。
D12の基本構造体はもちろんカーボンモノコック。フロントにも同素材のクラッシュボックスが装備されており、一方のリヤにはアルミニウム製のサブフレームが組み合わされる。
このサブフレーム上に搭載されるエンジンは、ドラージュが自社生産する7.6リッターのV型12気筒エンジンにエレクトリックモーターを組み合わせたもので、最高出力はV型12気筒エンジンが990馬力、エレクトリックモーターは110馬力(クラブ仕様は90kg軽量な20馬力仕様のモーターを搭載する)となり、システム全体での最高出力はロード仕様では1100馬力という数字に達する。組み合わせられるミッションは8速でリバースはエレクトリックモーターによって行われる。
サスペンションは、フェラーリやマクラーレンのF1マシンに採用されたことでも知られるコントラクティブ・サスペンション。前後のホイールはフロント20インチ径、リヤ21インチ径のカーボン製。フロントに380mm径、リヤに36mm径を採用したカーボンセラミックディスクを冷却するため、効率の高いデザインを採用しているのも特長だ。
タイヤはミシュラン製のパイロット・スポーツ 4Sが、前後それぞれ265/35ZR20、325/30ZR21サイズで装着される。ドライウエイトで1390kg(クラブ仕様は1300kg)という軽量性を誇るD12。誰もが気になるその最高速は360km/hと発表されている。
またひとつ、ハイパーカーの世界に気になる新星が誕生した。