この記事をまとめると
■世界ラリー選手権第13戦「ラリージャパン」で主役となった勝田貴元選手
■デイ2でのクラッシュ以降から攻めの姿勢で勝田選手はベストタイムを次々とマークした
■表彰台には上がれなかったが2024年に向けて大きな成長を遂げた
鳥肌が立つような攻めの姿勢で5位入賞の勝田貴元
WRC第13戦「フォーラムエイト・ラリージャパン」が11月16〜19日、愛知県・岐阜県で開催。エルフィン・エバンスがシーズン3勝目を獲得したほか、セバスチャン・オジエが2位、カッレ・ロバンペラが3位につけるなど、ホームイベントに挑むトヨタGAZOOレーシングWRTが1-2-3フィニッシュを達成したのだが、筆者から見れば2023年の日本決戦は、やはり、日本人ドライバーとしてトヨタの4台目のGRヤリスRally1ハイブリッドで5位入賞を果たした勝田貴元が主役だった。そう思えるほどに、勝田は今大会でスリリングな戦いを演じていた。
勝田のドラマチックな戦いはデイ2のSS2から始まった。既報のとおり、勝田は同ステージでクラッシュを喫し、33番手タイムでフィニッシュ。マシンのフロントまわりを破損したことから、勝田は続くSS3を18番手タイムでなんとか走り切ったが、多くのファンがこの波乱の幕開けを残念に思ったことだろう。
もちろん、筆者もそのひとりだが、同時に勝田のSS2のチャレンジに、「勝利に対する決意」が感じられた。思い起こせば一年前、2022年のラリージャパンで勝田は最大のリスクを持って結果を求めていく……と宣言していたが、どこかでセーブしていた部分があったのだろう。その結果、デイ1で出遅れ、最終的には3位で表彰台を獲得したが、ついに勝田は最後までトップ争いに加わることができなかった。
勝田にはこのときの悔しさがあったに違いない。果たして1年越しのラリージャパンで勝田は実質的なオープニングステージとなるSS2から「勝つための勝負」にチャレンジしたのである。
金曜日のデイ2、とくにファーストループは視界を遮るほどの豪雨に祟られ、ステージのいたるところでハイドロプレーニングが起きるほどの状態だった。ヒョンデ・シェル・モビスWRTのエサペッカ・ラッピも「こんなに難しいターマックラリーはほかにない」と語るほど過酷なコンディションで、まさにドライバーにとって、SS2、SS3はタイトロープを駆け抜けるような感覚だったに違いない。
そこで勝負に挑んだ勝田は、前述のとおり、限界を超えてしまいコースアウトを喫したが、そのファイティングスピリットは午後のループでも衰えなかった。