結局は「低価格」が勝つのか? 中韓メーカーの攻勢にどうなる日本のBEV市場! (2/2ページ)

日本メーカーが販売するEVの現状は?

 一方、日本には軽自動車規格のBEVが存在し、人気を博している。2023年秋現在、日本でもっとも低価格で、もっとも売れているBEVがサクラだ。航続距離が180kmながら、これで十分と思った人が少なくないことは、販売実績が証明している(姉妹車のekクロスEVはなぜかそうでもないが……)。

日産サクラの走行写真

 しかし、その少し上のクラスとなる、前述のドルフィンやコナを迎え撃つ日本勢は手薄といわざるをえない。500万円級のクラスもテスラに完敗というほかないのが現状だ。

 たとえばホンダeは、このところずっと月販50台を下まわっているが、もっと大幅に価格が安いか、あるいはもう少し航続距離が長ければ、販売はだいぶ違ったはず。売れていない理由は、大方が感じているとおりおそらくシンプルだ。

ホンダeのフロントスタイリング

 リーフの2023年9月の販売台数656台と、671台のアリアをわずかに下まわった。登場から時間が経過して、値上げされても一定数の販売を維持しているあたりは、こうしたベーシックなBEVへのニーズが根強くあることの表れではあるが、見込まれたほどは売れていない。既存の乗用車と同じように使って欲しいという思いもあって、あえて「普通」に作られたわけだが、もう少しいわゆる「遊び心」が欲しいところだ。

 その他の車種で、アリアやbZ4Xやソルテラあたりはサイズが大きく価格帯もだいぶ違うが、アリアはさておき、bZ4Xとソルテラの実情はかなり寂しい数字となっている。MX-30についてはマツダとしてもBEVの延長にあるものと認識している話題のロータリーEVがまもなく出るので、これからが本番と見るべきだろう。

トヨタbZ4Xとスバル・ソルテラの2台並び

 いずれにしても、問題となるのが価格だ。スペックなど内容的にも、ドルフィンやコナは割安感があり、日本勢や欧州勢が割高に感じられてしまう。その最大の要因が、バッテリー調達のためのコストだ。日本や欧州のメーカーは中韓勢ほど安く売ることは難しい。

 とくに日本のリーフは、これまで販売された数十万台が発火事故を起こしていない等といった優れた信頼性をもっとアピールできるのにという気もする。ところが、ユーザーにとってはそれに以前に、まず価格、次いで商品としての魅力に目が向くのはやむをえないだろう。

日産リーフe+(2代目)のフロントスタイリング

 ご参考まで、国産車と輸入車の合計で、2023年9月の販売台数は、BEVが9017台(乗用車全体の2.48%、前年比+3.75%)、PHEVが5670台(同1.56%、+22.65%)となった一方で、HEVは17万0953台(同47.04%、+23.86%)も売れた。優れた魅力的な車種がたくさんある日本ではまだまだHEVが強い。

 このうち最量販のサクラが3801台(別計算のeKクロスEVは375台)、日産全体では5128台で、ちなみにBYD全体で過去最多の189台、ヒョンデ全体で36台だった。国内の販売網で圧倒的に優位な日産をもってすれば、これぐらいはいくわけだが、それでも、普通車でも軽自動車のなかでも、10位に入るにはほど遠い台数ではある。

日産サクラのフロントスタイリング

 日本には、売れ筋のコンパクトカーも、やはり充電の不安のないHEVの比率が高い。それもあって、日本のメーカーはこれまでコンパクトなBEVにそれほど力を入れてこなかった。もちろん日本が先進国のなかではずいぶん立ち遅れているインフラの整備状況にも影響を受ける。

 いろいろな事情がかさなって、なるようになった結果が現在の状況であるわけだが、日本のメーカーもよりコンパクトかつ軽量で効率の高い次世代バッテリーの開発を進めており、コンパクトなBEVがそう遠くないうちにいくつか世に出されそうな情報も耳にする。ひとまず、もうしばらく各社の動向を見守ることにしたほうがよさそうだ。


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