ホイールなんてデザインがすべて……は間違い! レーシングドライバーが語る「ホイールの機能」と選択の重要性 (2/2ページ)

ホイールは走行性能、燃費性能、快適性など多くの要素に影響する

 アルミは融点が660度と鉄に比べて低く、溶かして型に流し込む鋳造が行いやすい。また、鉄より柔らかいので加工しやすく、鍛造したり切削加工することも可能だ。ひと口にアルミホイールと言っても鋳造製、鍛造製、プレス製、切削製と製造方法が異なり、それで強度も変化する。もちろん合わせ込む素材との比率や方法によっても剛性が変化する。

アルミホイールの成形工程

 マグネシウムも同様で、加工法、形状などにより特性は変化する。

 軽量化を追求するあまり、ホイールセンターをスポーク化し、そのスポークがまるで人の指ほどの細いデザインを採用したものもある。極端な細さになれば剛性は低下し、安全性も低下してしまうだろう。金属には「ヤング率」という指標があり、かかる応力と歪みの関係が定義されていてアルミは鉄に比べて明らかに柔らかい。鉄と同じ強度を与えるには鉄より厚みを持たせ、鉄以上に重くしなければならないので、悪路を重視した場合はアルミホイールといっても鉄ホイール並みに重くなってしまうのだ。

複数のアルミホイール

 アルミであれば靭性が高く、多少変形しても破壊に至らない。靭性特性で衝撃を減衰しやすく快適性は高まり、デザイン自由度の高さもあってアルミホイールは現代の主流となっているのだ。

 ホイールは、またハンドリング面に与える影響も大きい。ステアリングを切り込むとホイールを通じてタイヤにスリップアングルが与えられグリップが発揮される。するとホイールには捻り応力が加わり、剛性が低いと応力に対して変形が起こってしまい、ハンドリングのステアリング追従性にネガティブな影響を与える。また、ホイールのリム剛性がタイヤビード部との接合強度を左右するので、リム剛性が弱いとタイヤの位置が回転方向でずれてシミーの原因になってしまう。

走行しているクルマのタイヤ

 このように、ホイールが担う要件は多岐に渡り、クルマの走行性能、燃費性能、快適性さらには耐久性などに大きな影響を及ぼす。魅力的なデザインのホイールが巷には溢れているが、こうしたさまざまな知見から自分の使い勝手にマッチする安心・安全なホイール選びをしてもらいたい。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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