バスにバンと国産商用BEVが続々登場! 「低価格」を武器に日本市場に乗り込む「アジア勢」との争いが激化の予感 (2/2ページ)

BEVの路線バスに大量受注が入ってる!?

 JMSの会場に「フォロフライ」というEVベンチャー企業がブースを構えていた。そこには中国DFSK(東風小康汽車)ベースの小型BEVバン「F1」が展示されていた。もともとBEVの開発を行っていた同社は、そのノウハウでDFSKの車両を日本でも販売するための認可を受けるための改造を行い、そして販売しているとのことである。「F1のような1トンクラスのBEV商用バン及びトラックの認可はかなり審査が厳しく、フォロフライのようなノウハウがないと認可を受けるのはかなり厳しいとも聞いています」とは事情通。

JMSのフォロフライ社の展示ブース

 フォロフライのF1については、すでに大手物流企業である「SBSホールディングス」が1万台程度の導入計画を発表されている。

 このF1は、全長4500×全幅1680×全高1985mm、トヨタ・タウンエースバンが全長4065×全幅1665×全高1930mm、トヨタ・ハイエースバン・ロング標準ルーフでは全長4695×全幅1695×全高1980mmなので、ボディサイズとしては「タウンエースバン以上ハイエースバン以下」といえるだろう。

 フォロフライブースでは、F1の導入コスト例が掲示してあったが、比較対象として記してあったハイエースバンのディーゼルより、試算上でのトータルコストでは若干安いとアピールしていた(ちなみにインドネシアではGELORIAの価格は約166万円からとなっている)。

「JMSではトヨタ車体ブースに『グローバル・ハイエースBEVコンセプト』が展示されていましたが、市販版が発売されると1000万円ぐらいになるのではないかとの話をJMS会場内で聞いています」(事情通)

JMSのトヨタ車体ブースの「グローバル・ハイエースBEVコンセプト」

 一方、いすゞブースには、老舗トラック&バスメーカーとしての「日の丸BEVバス」としては初展示といっていい、「エルガEV(路線バス)」が展示されていた。発売は2024年度中を予定しているようだが、すでに水面下では予約受注活動が展開され、「そんなに受注とって生産できるの?」といったレベルの受注台数になっているとの情報もある。

JMSのいすゞブースの「エルガEV」

 バスについては販売する事業者によって導入台数など条件がかなり異なるので、明確な実売価格というものはなかなかはっきりしないのだが、情報では「中国BYDのBEV路線バスの導入を検討しているのなら、許容範囲の価格差(やはり高いようだ)になっている」との情報も飛び交っている。

 小型BEVバン、そしてBEV路線バスを例として紹介したが、日系ブランドでラインアップが増えることは喜ばしいことだが、次のハードルとして、とくに商用車分野では「価格設定」というものが出てくる。賃金についてはすでに一部で新興国以下レベルになっているとも言われている日本だが、とくに新興国企業と比べれば、日本企業の高コスト体質に変化はない様子。

 DFSKの小型BEVバンを例にすれば、すでに中国のみならず海外でも販売実績があり価格競争力も高まっている。「ようやくいいものが出来ました」と日系メーカーがBEVをリリースしても、乗用車も含め海外市場ではすぐに激しい価格競争に巻き込まれてしまう。すでにタイあたりでも、BEVの値引き合戦が熾烈になっている様子。

 日本国内では前述したように、登録車規格でほどほどのサイズでは行政当局の認可を受けるには相応のノウハウがないとかなり面倒なことになるケースもあるようだ。非関税障壁として諸外国からクレームでもつけば緩和されるのだろうが、これがある程度「防波堤」となれば、日本国内での日系ブランドのBEV普及は、諸外国に比べれば進むことになるだろう。

JMSのスズキブースの「eエブリイ コンセプト」

 好むと好まざると、日系ブランドでも政府がカーボンニュートラルを宣言してしまっているので、BEVラインアップは増やさざるを得ないだろう。ただ、日系ブランドの高い技術力で良質なBEVが増えたとしても、政府が補助金で大盤振る舞いしてくれない限りは、今度は「価格が……」というものが問題となっていくのではないかとの声も大きくなっている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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