国産リッターカーの優位性はかなり限定的
動力性能では、さすがに排気量の大きい(といっても1リッターだが)リッターカーが圧倒有利……と思うのは間違い。たしかに1リッターガソリンエンジンと660ccの軽自動車のエンジンをNAエンジン同士で比べれば、リッターカーの1リッターエンジンが有利だ。
しかし、軽自動車のエンジンがターボになると話は別。たとえばトヨタ・ヤリスGの1リッターNAエンジンのスペックは車重970kgで69馬力、9.4kg-m。ヤリスと同じリヤヒンジ式ドアの軽乗用車のホンダN-WGNカスタムのLターボは車重870kgで64馬力、10.6kg-m。パワーで接近し、トルクでは軽ターボが上まわり、なおかつ車重が軽いため、シーンによっては軽ターボ優勢となったりする(ターボ同士ならまた話は別だが)。
ただし、N-WGNカスタムのLターボ(FF)の価格はけっこう強気な178.42万円。ヤリスG、CVT(FF)は164.5万円と、N-WGNがターボの場合、リッターカーのほうが安くなるケースもままあるのだ(N-WGNのNAモデルなら130万円~だが)。ここは悩ましい……。
もっとも、軽自動車の魅力として、N-BOXやスペーシア、タント、ルークスのような両側スライドドアを備えたスペース系からデリカミニ、タフト、ハスラーのようなクロスオーバーモデル、そして新車ではコペンのようなオープンスポーツカー、さらに日産サクラ、三菱ekクロスEVといったいまをときめく先進の電気自動車、ホビーユースとしてスズキスペーシアベース、ホンダN-VAN、ダイハツ・アトレーといった軽商用車までが選べる選択肢の幅広さがある。リッターカーだとハッチバック、ハイトワゴン、クロスオーバーモデルが選べるものの、その選択肢は、軽自動車に対してかなり限られてしまう。
さらに、いまの軽自動車は下手なリッターカーより先進運転支援機能が充実し、たとえばリッターカーのクロスビーにない電子パーキングブレーキやオートブレーキホールド機能などまで装備する車種(ホンダ、日産、ダイハツ、三菱)も数多く、軽自動車は安全装備などでリッターカーに劣る……ということはまったくないのである。
よって、価格、維持費、扱いやすさを含め、街乗り中心なら圧倒的にリーズナブルに乗れ、しかも室内空間広々のNAエンジンの軽自動車で十分だし、たまに高速道路を走るのであれば、先進運転支援機能のACCまで備わる軽乗用車のターボモデルを選択すれば、かなりの満足度が得られる時代になっている。
とくにセカンドカーとして選ぶのであれば、ランニングコストでの優位性が際立ち、リッターカーにないサクラやekクロスEVのような電気自動車はさすがに高価だが、補助金によって価格はグンと下がり、時代の先端を行く選択ともなる。
そのうえでリッターカーの優位性を考えれば、ライズ、ロッキーにあるリッターターボモデルの人数乗車でも高速走行、山道の登坂路を楽々こなす動力性能のゆとり、ナンバープレートが黄色じゃなく白い……ことなどだろうか。
言い方を変えれば、ここ最近、国産車があまり力を入れていないリッターカーに対して、車種が圧倒的に多い軽自動車は全方位の商品性を各自動車メーカーが凌ぎあい、飛躍的に高めてきている、とも言えるのだ。最新のN-BOXや、ジャパンモビリティショー2023で初公開され、11月に発売される新型スペーシアに触れれば、それも納得できるのではないか。