補助金次第では現実的な500万円アンダーも狙える
EX30はコンセプトだけでなく、具体的な設計段階からライフサイクル中のカーボンフットプリントを徹底的に下げることを目標に開発された。そのため、内装を構成するパーツ自体の点数が少ない。ハーネスや配線の量を抑えるためウインドウ開閉スイッチは中央に、ドア内スピーカーは止めてダッシュボード奥にハーマン・カードンのサウンドバーとするなど、すべてが極力、センターに集められている。
それなのにビンボー臭く見えない辺りがさすが北欧デザイン。インテリアのチーフデザイナーは英国人の女性だが、センターコンソールから取り外せるダストボックスのモールには、野原で遊ぶトナカイが描かれていて、あざとさゼロで可愛い。
ボルボによれば、インテリアの加飾部分の約30%が再生プラスチックで、表面レイヤーには可能な限りリサイクルまたは再生可能な素材が用いられている。それでいてドアハンドルはちゃんとアルミだったりする。要はミニマルだが素材感に嘘がないのだ。クロームメッキや化繊、編み込みプラスチックの騙し絵みたいな質感で、プレミアムを騙る往生際の悪い内装インテリアが多いからこそ、この直球の質感が優しく、清々しいのだ。
そして注目の走りだが、69kWh容量のバッテリーで最大航続距離は、WLTCモードで560kmを謳っている。実際、街なかではワンペダルモードで走る方が回生も強く効いて扱い易かった。バルセロナの流れの速い市街地で、右足だけで加速も停止も自由自在でラクにコントロールできた。
郊外路や高速道路ではコースティング重視のモードに切り替えたが、しっとりした乗り心地に鈍からず鋭過ぎずのハンドリング、1800㎏少々のボディを軽々と蹴り出す343Nm・272馬力のトルク&出力に不足はない。蹴り出すと述べたがそう、後輪駆動2WDなのだ。
以上の「シングルモーター」仕様に対し、前車軸側も駆動する「ツインモーター」という4WD仕様もある。2基のモーターの合算値で543Nm・444馬力という後者の方にも試乗したが、おそろしく力強く、密なトラクションによる速過ぎるぐらいの速さが印象的だった。
加速マニアにはツインモーターがお勧めだが、バッテリー容量はシングルモーターと同じ69kWhなので、最大航続距離は少し減る。それでも500kmは超えているだろうが……。
いずれEVである以前に、クルマとして妥協のない造り込みと完成度、パフォーマンスをEX30は備えている。そして、再生またはリサイクル可能な素材を用いたエコへの積極性が、いやらしくないのにデザインに感じられるところが巧い。それでいて日本での価格は559万円〜なので、補助金にもよるが、500万円アンダーは現実的なセンだ。少し考え方が進んでいて、鉄仮面のようだけど内実アリ、そんなEVとして覚えておきたい。