クルマという感覚で扱われていなかった
筆者の幼少時代の軽自動車といえば、まだまだ360ccが主流であった。当時公団(いまのUR)の団地に住んでいたのだが、マイカーが増えるなか放置駐車も目立つようになり、団地の建物前の通路入口の放置車両が邪魔をして通路へ入ることができないこともあった。
あるとき、入口を塞ぐように駐車された軽自動車によって通路に入れなくて困っていると、近所のお父さんたちが数人集まってきて、一斉に軽自動車を持ち上げて移動させていたのをいまも鮮明に覚えている。当時は結構そんなことが当たり前の光景だったようにも記憶している。
さらに歴史を遡ると、軽四輪ではないが軽三輪トラックが、オーバースピード気味で交差点に進入し、曲がり切れずによく転倒していたという都市伝説のような話も聞いたことがある。そんなときは、歩行者数人が集まって軽三輪トラックを起こしてあげると、再び走っていったとのこと。
ちなみに筆者の母親が若いころに、「クルマで迎えに行くからデートしよう」と誘われたので待っていると、軽三輪トラックで迎えに来たのでそのまま帰ってきた、という笑い話を聞いた。クルマがまだそれほど庶民にとって身近なものではなかったものの、さすがに軽三輪トラックでのデートはNGだったようだ。
また、筆者が小学生のころには、近所の空地によく軽自動車の廃車が放置(違法投棄)されていた。友だちとの間では「ナンバープレートがなければOK」という、変なレギュレーションを設け、ナンバープレートのない放置軽自動車を見つけては、自宅から持ってきた工具でエンブレムなど外せるパーツをすべて外して遊んでいた。
昭和のころの軽自動車はいろいろな意味で、いまよりも独特の世界観を持っていたと感じるとともに、いまの軽自動車は登録車との境界線がわからないほど性能向上していることを改めて感じた。