いまのホンダのイメージにステップワゴンはあってない
理由はほかにもある。
まずステップワゴンは、ライバル3車に比べるとフロントマスクの表情が穏やかだ。いまのような殺伐とした時代には、ステップワゴンのフロントマスクは好感を持てるが、一般的には存在感の強い顔立ちが好まれる。ステップワゴンは目立たない。
そしてステップワゴンの柔和なデザインを明確に反映したのは、エアロパーツを装着するスパーダではなく標準ボディのエアーだが、この仕様には後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットインフォメーションが設定されない。その背景には、ボディ後部のバンパー形状がスパーダと異なるため、ブラインドスポットインフォメーションのユニットが収まらなかった事情がある。
このほか、エアーには、スパーダに用意されるLEDアクティブコーナリングライト、前席シートヒーター、2列目シートのオットマンなども用意されない。
そうるなると、せっかくステップワゴンの穏やかな外観に魅力を感じてエアーを選ぼうとしても、装備に不満を感じてしまう。だからといってスパーダでは、エアーに比べて穏やかな魅力が薄れるため、結局はステップワゴンは中途半端な商品と受け取られる。ユーザーを逃してしまうのだ。
また、ホンダ車の売られ方も変化した。いまでは日本で販売されるホンダ車の約40%がN-BOXで占められ、NーWGNなどほかの軽自動車も加えると50%を超える。そこに前述のフリードも加算すると、70%前後に達するのだ。
つまり、N-BOXが際立って好調に売られる時代が10年以上続いたことで、ホンダのブランドイメージは「小さくて背の高い実用車を作るメーカー」に変化した。「ホンダ車を買うならステップワゴンではなくフリードでしょ」というわけだ。
このようにステップワゴンの販売不振は複数の理由に基づき、ホンダの国内販売を象徴している。ステップワゴンに限らず、フィットやヴェゼルの売れ行きも、フリードを下まわっている。