未来を担う若者には「プレリュード」の名前は刺さらない?
そして今回、JMSでプレリュードの車名復活となったのだが、5代目が終売となってから22年、黄金期といっていい2代目終売からじつに36年が経過している。
何を言いたいかというと、「おっプレリュード復活か」と興味を示すのは、当時青春時代を送っていた“オジさん”世代がメインとなり、若者層にどこまでアピールできるのか疑問が残る。「俺たちの若いころはこぞって乗っていたものだ……」といった、オヤジトークを嫌うZ世代の心には響くのだろうか。
また、2代目や3代目あたりのアイデアの詰まったホンダらしい独自性も薄く、4代目以降あたりのキャラクターでの復活のように見える。ホンダブランドとしての旗印が欲しかったのかもしれないが、メルセデス・ベンツなど、代々クーペをラインアップしてきたドイツ系ブランドでも、今後はクーペのリストラが積極的に行われようとしている時代に、トヨタのGR86のようなキャラ立ちもしていないところも気になってしまう。
ホンダは、国内ではN-BOXの販売台数が圧倒的に多く、ほかによく売れているのはミニバンのフリードやステップワゴンと、令和のいまでは生活臭の強いモデルの販売が主力となっている。
いまの若者は、オジさん世代が抱くホンダのブランドイメージとは完全に異なるイメージを持っている。海外市場でも売れ筋はSUVのCR-Vとなり、北米ではファミリーSUVともいえるパイロットもよく売れている。東南アジアではコンパクトモデルもよく売れており、日本市場に近いイメージが定着しているようにも見える。
現状で往時のブランドイメージ復権をはかるには、相当な体力がいる仕事となるだろう。また、筆者自身が還暦近くになっていることもあるのか、プレリュード・コンセプトを見てもあまりときめくことができない。「さすがホンダだなあ」というアピールが伝わってこないのである(個人の感想になってしまうが……)。
また、ホンダはJMSで「SUSTAINA-C CONCEPT」というモデルも展示していた。持続的社会への対応を訴求したモデルであり、見た目は二の次なのもしれないが、どう見ても初代ホンダ・シティとモトコンポをオマージュしたエクステリアとなっている。
初代シティがデビューしたのは、いまから42年前の1981年、これもまたこのコンセプトカーを見て敏感に反応するのは筆者のようなオジさん世代となるだろう。
ホンダがもっとも輝いていたように見えた1980年代を振り返ることに異論はない。ただ、東京モーターショー改めJMSとしたショー会場での展示となると、若者世代すべてとはいわないが、若者へのアピール力がいまひとつに見える展示内容には少々違和感を覚えた。