世界的に見ても女性コンパニオンの数は減少しつつある
中国の北京や上海、広州などで開催されるオートショーが世界的に話題になりはじめたころは、前述したバブル経済のころの東京モーターショーのように、どのブースでもコンパニオンのお姉さんがたくさんいて、高価な撮影機材を携えた「カメラ小僧」ならぬ「カメラオジサン」が多数会場内に出現した。ライトなど機材を持ったアシスタントを同行させている猛者までいた。
当時の中国メーカーでのコンパニオンは、各地元出身の女性が採用されることが多かった。例えば重慶市が地元のメーカーなら、重慶市でオーディションを行い、重慶出身の女性が採用されるといった具合だ。ただし、コンパニオンのなかには、幹部役員の愛人が交じっていることも多かったとの話も聞いたことがある。
年々衣装の露出が激しくなっていくなか、2015年前後から中国における1級都市(中国は都市毎にランクがある)となる、北京や上海でのオートショーでは、単純な女性コンパニオンの配置が禁止となった。
そして、それに代わって登場したのが「女性商品説明員」。単に容姿だけで採用するのではなく、商品知識などについて筆記試験も行われた。採用されると、若干派手気味なビジネススーツを着用し、それぞれが担当する車両について、来場者からの質問に答えることも業務のひとつとして要求されるようになった。
カメラを向けると撮影には応じてくれるのだが、撮影を頼むのも遠慮したくなるほど、説明に追われることも多く、彼女らはじつに多忙そうに見えた。
北京や上海並みに注目される規模での開催となる広州ショーの場合、広州市は2級都市となることもあるのか、筆者が最後に訪れた2019年のショーでは、コンパニオンと呼んでいい存在の若い女性が会場に溢れていた。
ただし、中国のオートショーはもともとバランスを保とうと努力していたのか、ワイルドなクロカンとも呼べる4WD車などの横には、半裸で腹筋が綺麗に割れているムキムキの男性モデルなどを配置するメーカーも目立っていたのが印象的であった。
中国では一部「規制」が入ってしまったが、筆者が訪れた国の範囲で見れば、インドや東南アジアはまだまだコンパニオン天国となっている。
とはいうものの、タイの首都バンコクで開催されるオートショーでも、新型コロナウイルス感染拡大後になると、感染予防もあるのか若干コンパニオンのお姉さんが減っているようにも見える。逆にインドネシアの首都ジャカルタ開催のオートショーでは人数が増加傾向にあるように見受けられる。インドもインドネシアと状況は近い印象を受けた。
「格好いいクルマに乗っていれば女性にモテる」、昭和のころの男子のほとんどはそう考えていたし、実際にその傾向は否定できなかった。男女で免許取得率にまだまだ差があった時代でもあり、クルマという世界がいまよりも男くさい時代だったので、モーターショーの来場者も男性が多く、ショーにおいてコンパニオンの存在は客寄せ効果も高かった。
しかし、令和の時代となると、そのような光景を不快に思う人も増えてきているのも間違いないだろう。
いまはまだコンパニオンのお姉さんで溢れる東南アジアなどのオートショーでも、社会の成熟とともにコンパニオンが減っていくことは十分にありえる話。多様化していく社会に対応していくなかでは自然な流れなのかもしれないが、昭和時代をよく知る筆者のようなオジサンには、オートショーの風物詩のひとつが風前の灯火のように見えるのは、やはり一抹の寂しさを覚えてしまう。