日本でそのスペック本当に必要か? 0-100km/h加速3秒台のスーパーカーが持つ「速さ」以上の価値 (2/2ページ)

本当に求められているのは「速さ」ではない

 では、そういった「0-100km/h3秒台」に価値と意味を感じるある種の人とは、果たしてどんな人々なのか? いわゆるスピード狂? いや、それは違うだろう。彼ら・彼女らはスピードそれ自体に価値を見出しているのではない、たぶん。

 そうではなく「自分はいわゆる富裕層だが、ただの富裕層ではなく『とくに優れた富裕層』なのだ」と感じていたい人々が、それら2秒台や3秒台のクルマを購入するのだ。そして速さそのものではなく、その特別感に酔いしれるのである。

マクラーレン765LTスパイダーのガルウィングドアを開けた写真

 年収400万~500万円ぐらいで生活している人は、年収1000万円ぐらいの生活を「すごく裕福なんだろうなぁ」などと想像している場合が多い。だが、実際に1000万円ぐらいで暮らしている人は自分のことをド庶民だと認識しており、なんならド貧乏ぐらいに思っているかもしれない。なぜならば――まぁいまの日本では年間1000万円程度では本当にショボい暮らししかできないからという、身も蓋もない話もあるわけだが、それと同時に「上には上がいるから」である。

 同様に、筆者のようなド庶民からすると、0-100km/h加速が4秒台のポルシェ・パナメーラGTSあたりを見ると「超お金持ちが乗る超ハイパフォーマンス車!」と感じてしまうわけだが、乗っている当人は、おそらくは「普通のカローラみたいなもの」ぐらいに思っているはずだ。

ポルシェ・パナメーラGTSの走行シーン

 で、「こんなカローラみたいなポルシェじゃなくて、もっとすげえのに乗りたいよなぁ……」などとつぶやきつつ、あるとき、0-100km/h加速2秒台とか3秒台の「すげえの」を購入し、深い深い自己満足にふけるのである。

ランボルギーニ・レヴエルトのフロントスタイリング

 彼または彼女がそのアクセルペダルを本気でベタ踏みし、100km/hまで3秒ぐらいで到達させてしまうことも、まぁ稀にはあるのだろう。しかしそれは(たぶん)きわめて稀であるはずだ。なぜならば、彼または彼女が本当に欲しているのはスピードそのものではなく、「すげえ自分にふさわしい、すげえクルマを所有すること(所有できること)」だからだ。

 まぁ、筆者には何の関係も興味もない世界の話ではあるのだが、そういった人々としては、「0-100km/h3秒台のバカッ速モデルを所有する意味」は、確かにあるのだ。


伊達軍曹 DATE GUNSO

自動車ライター

愛車
スバル・レヴォーグ STI Sport EX
趣味
絵画制作
好きな有名人
町田 康

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