この記事をまとめると
■アメリカではEUや中国に比べてBEVの普及がそれほど急激ではない
■アメリカでは昨今の世界情勢にHEVモデルへの再評価が進んでいる
■HEVの人気が上がっているなか、ホンダのアメリカ市場ではHEVのラインアップが少ない
アメリカではHEV車の人気が高まっている
EU(欧州連合)や中国ほどBEV(バッテリー電気自動車)の普及へ前のめりになっているわけではないのがアメリカ。それでもカリフォルニア州の道路を走ってみれば、テスラをはじめとしたBEVが目立つ。このような光景はまだまだ気候変動対策にとくに積極的な動きを見せるカリフォルニア州ならではのものであり、ほかの州でも同じ光景となっているというわけでもないが、それでも日本政府よりは連邦政府の姿勢は前向きなものになっているといっていいだろう。
そんなアメリカではトヨタ・プリウスをイメージリーダーとして、HEV(ハイブリッド車)も日系メーカーを中心にラインアップされてきて久しい。しかし、「プリウス=HEV=省燃費」というイメージがあまりにも先行してしまったせいか、例えば日本では23年内での終売が決まっているトヨタ・カムリでも、アメリカでは8代目からHEVをラインアップしていたが、それほど注目されることなく(カリフォルニア州ですら)、見かけるとしたらニューヨークのイエローキャブぐらいであった。
しかし、ウクライナ紛争勃発のタイミングから世界的に原油価格の高値傾向が続いており、筆者が2023年9月にロサンゼルス地域を訪れたときには、地元製油所の問題などもあったが、日本並みもしくは日本以上にガソリン価格が高騰していた。
サラリーマンだと通勤交通費が会社から支給される日本だが、そのような支給がある国は世界的には稀。生活のほぼすべての移動にクルマを使うロサンゼルス地域では、ガソリン代の高値傾向は家計をまさに直撃する。
このような状況下で、ここのところカリフォルニア州を中心にHEVが見直されているという話を地元で聞いた。BEVを所有したしても充電インフラも充実しており、日本ほどストレスは感じないのだが、それでも日本でいうところの一般庶民層が買い求めやすい価格帯のBEVは結構限定される。まだまだBEVは、一般庶民には敷居が高い様子なのだが、それでも燃料費負担をセーブしたいということで、ちょうどいい立ち位置にいるHEVが注目されてきているとのことである。
プリウスに代表されるように、アメリカでも「HEV=トヨタ」というイメージが強い。レクサスがトヨタの上級ブランドというイメージがあまり定着していないともされるアメリカで、過去にレクサス車にHEVがラインアップされはじめたころ、ディーラーでレクサスのHEVをお客に勧めたら、「トヨタの作ったHEV以外は乗りたくない」といわれ、説明して納得してもらうのに苦労したという話を聞いたことがある。
調べてみると、現状トヨタのアメリカでのラインアップをみると、カローラセダン、カムリ、タコマ(ピックアップトラック/2024年モデル)、タンドラ(ピックアップトラック)、ハイランダー及びグランドハイランダー(SUV)、RAV4、カローラクロスにはガソリンエンジン搭載車のほかにHEVが用意されている(RAV4にはPHEV[プラグインハイブリッド車]もあり)。
さらにシエナ(ミニバン)、セコイア(SUV)、プリウス、クラウン(クラウンクロスオーバー)、ヴェンザ(ハリアー)はHEV専用となっている。アメリカでガソリンエンジン搭載のみのトヨタ車は、4ランナー(SUV)、GRカローラ、カローラハッチバック(カローラスポーツ)、GR86、GRスープラとなっていた。なお、BEV専用のbZ4XとFCEV(燃料電池車)専用のミライもラインアップされている。
つまり、ほぼほぼアメリカにおいて販売されるトヨタ車には日本市場のトヨタ車同様にHEVがラインアップされているのである。