中国撤退が吉と出るか凶と出るか今後の動向に注目
筆者の私見を述べさせていただければ、BEVで出遅れているというよりは、BEVだけではなく日本車が世界のトレンドから遅れているように見えるほうが事態を深刻にさせているよう思う(日本市場がガラパゴス化しているので、世界のトレンドになかなか合わせられないということもあるようだ)。
過去には、VW(フォルクスワーゲン)がTSIエンジン(直噴ガソリン過給エンジン)やDSG(デュアルクラッチ)などを本国で採用を始めたほぼ同時期に、中国市場でも導入した時期があった。その当時、中国の消費者は、「ドイツ車などは我が国に最新技術搭載車をラインアップするが、日本車は日本での最新トレンド技術搭載車をなかなか持ってこないので古臭いし、バカにしているように見える」といったこともささやかれたと聞いている。その後、日本車も日本市場とタイムラグなく最新型車を中国市場に導入してきたのだが、最近ではその最新トレンド自体にも乗り遅れ気味のようにも見える。
たとえばデジタルディスプレイひとつとっても、欧州車の動きを見ていち早くデジタル計器盤を中国メーカーがこぞって採用するようになっても、日本車はアナログメーターが主流であった。その後、センターディスプレイの大型化競争のようなものが中国で勃発したのだが、日本メーカーは静観視しているように見えた。かつてはカーエレクトロニクス関連では世界トップだった日本車としては、現状を見ると物足りない気持ちになってしまう。
三菱自動車に話を戻せば、三菱自動車は「損切り」をしたといってもいいのではないだろうか。三菱自動車は東南アジア諸国ではピックアップトラックの「トライトン」や、小型MPVとなる「エクスパンダー」といったヒットモデルを抱え販売は好調であり、ブランドステイタスは高い。たとえば2022暦年締めでのタイ国内での年間販売台数は5万385台となり、フォードやマツダ、スズキ、ヒョンデなどよりも多くの台数を販売し、ブランド別で4位となっている。
アメリカでは2022暦年締め年間販売台数は8万5810台となっている。2021年比では台数を落としているが、これはアメリカでも半導体不足などによる供給問題が起きていたので仕方のないところであり、2020年比で2021年の年間販売台数は約1.5万台増となっている。
軽自動車販売が含まれる国内販売と比較すると、2022暦年締めでの国内販売台数は9万555台(登録車は4万9179台)なので、アメリカ市場も意外と言っては失礼だが、堅調ぶりが見てとれる(東南アジア市場は、日本車の販売比率が圧倒的に高く、実用車レベルではまだまだ日本車がトレンドを引っ張っていることもあるので、中国ほどトレンドに取り残されているような印象が薄い)。
「選択と集中」、これは新型コロナウイルス感染拡大前からよくいわれていた。三菱自動車は単に選択と集中を進めただけのようにも見える。
最近では、「みんな(世界の自動車メーカー)がこぞって中国に進出したが、程度の差こそあれ後悔しているのではないか、そして中国市場から逃げたいメーカーは多いのではないか」との話もよく聞くようになった。
三菱自動車の中国市場撤退はネガティブな話題として取り上げられているようにも見えるが、今後の状況次第では適切な企業判断だったと再評価されるときがくるかもしれない。