反響次第では市販化もあり得る?
ところで、デザインやメカニズムは非現実的であっても、違う意味で実現性が感じられるコンセプトカーもあります。ユーザーの反応を見るためのリサーチ目的のコンセプトカーは、そうした狙いで作られたものです。くだけた表現をすれば、「こんなクルマを作ったら、買ってくれますカー?」といったモデルです。
今回のジャパンモビリティショーで、もっとも「こんなクルマを作りたいんですけど、どうですカー?」という意思が感じられたのは、ダイハツの「ビジョン・コペン」でした。これまで軽自動車唯一の電動トップを持つ2シーターとして2代に渡り愛されてきているコペンですが、このコンセプトカーでは登録車(小型車)サイズに拡大することを提案しています。さらに、パワートレインは純エンジンで、1.3リッターを縦置きしたFRレイアウトを想定しているというコンセプトカーでした。
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しかも、ダイハツの方に聞くと、プラットフォームについては新設計が前提で、エンジンについてもなにかの流用を考えているわけではないということでした。つまり、このまま量産するという前提ではないコンセプトカーということです。
これは完全にユーザーの反応をリサーチするためのコンセプトカーということになります。「やっぱりコペンは軽自動車でなきゃ!」という声が多いのか、「FRになるならサイズは関係ない」となるのかなど、ユーザーの生の声を集めることが目的といえます。
ひとつ確実にいえるのは、ダイハツは次期コペンについて柔軟な姿勢で考えているということ。3代目コペンが実現するかどうかは、ユーザーからの熱いリクエストがどれだけ寄せらかに左右されるといえるのかもしれません。
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マツダのコンセプトカー「アイコニックSP」は、経営方針・商品計画の未来を示すコンセプトカーといえます。リトラクタブルヘッドライトを採用した滑らかで美しいフォルムや、2ローターエンジンを積んだPHEVというパワートレインといった想定は非常に魅力的で、「もし量産されたら絶対に買う!」という声も聞こえてきましたが、はっきり言ってこのまま量産というのは不可能でしょう。
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ボディは樹脂製で、ほとんど継ぎ目がないことから大きなカウルを載せた設計になっていることが見て取れます。これは量産に使う手法とは思えません。完全にデザインスタディで飾るためのコンセプトカーの典型といえる手法で作られています。
むしろ、「スポーツカーを作り続ける」、「ロータリーエンジンを発展させる」、「プラグインハイブリッドに注力する」というマツダの方針を、あえて1台にまとめて表現したコンセプトカーと理解すべきでしょう。
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それぞれの要素が別の市販車に搭載されるかもしれませんし、一台にまとまるかもしれませんが、いずれにしてもアイコニックSPがどんなに好評でも、そのまま量産計画がスタートするような位置づけのコンセプトカーではないと感じられます。
電動化時代になってもスポーツカーは作り続ける、という意思を示したのはマツダだけではありません。トヨタ「FT-Se」や日産「ハイパーフォース」、スバル「スポーツモビリティ コンセプト」はいずれもバッテリーEVのコンセプトカーですが、各社のヘリテージやキャラクターを色濃く感じさせるデザインとなっています。
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量産間近のプロトタイプばかりが並ぶ平成のモーターショーは、現実味はあっても「すぐにマネタイズしたいという、どこか世知辛いマインドが強く感じらるものでした。
生まれかわったモビリティショーでは、すぐ手に入りそうなクルマの展示は減ったかもしれませんが、夢と未来を感じさせるショーとしては来場者も満足いくものだったというのが、ショー全体を俯瞰したときの筆者の個人的な印象です。