この記事をまとめると
■旧車などで見かけることの多い「ベンコラ」はベンチシートとコラムシフトを略した俗称
■3人がけをあまり必要としない現代のクルマに「ベンコラ」を採用するメリットは少ない
■現代のクルマに大人3人がゆったりと座れるサイズのベンチシートを採用するのは難しい
現代のクルマの価値観には合わないベンコラ
中古車の物件紹介など、いまでも旧車の装備を見ていると出てくるのが「ベンコラ」という言葉。ベンチシートとコラムシフトを合わせて短くした、俗称が「ベンコラ」だ。
ベンチシートとは、公園のベンチのような長椅子のことで、キャプテンシートなどと呼ばれる独立したシートとは形状的に異なっている。簡単に言ってしまえば、前席も後席と同じような感じというわけだ。
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ベンチシートでは3人がけすることができて、現在でもハイエースには採用されており、乗ってみると横3人並びというのはなんだか愉快な感じがしたりする。2列シートなのに6人まで乗れるのも魅力である。「ベンコラ」と言うようにセットにされることが多いのは、ベンチシートにするとフロアシフトだと非常に操作しにくくなるためで、必然的にコラムシフトになることが多かったからだ。
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現在の軽自動車は3人乗れないにしてもベンチシートで、インパネシフトと組み合わせることで実現している。つまり、やってやれないことはないのに、なぜなくなってしまったのだろうか?
まず雰囲気の問題からすると、高級感がどうしても出しにくい。独立した運転席と助手席、そしてスイッチ類が並ぶセンターコンソールまわりなど、ある一定の価格帯以上のクルマだと雰囲気演出の重要なエッセンスになっている。一方、実用性重視のミニバンとなると、今度はウォークスルーができなかったり、前席の真ん中を塞ぐ形になるので開放感も減ったりするなどの問題がある。
定員的にも横に3人並ばなくても3列あれば最大で8人まで乗れてしまうため、無理してベンチシート化することもない。シートベルトやヘッドレストが人数分必要なため、ゴテゴテ感も増してしまう。

そして、法律的には寸法の規定がある。道路運送車両法では、1名分の座席寸法を座面は幅380mm以上としている。前席の場合、まずはふたりがゆったりと座れるのが必須。最近のクルマは3ナンバーサイズが当たり前になっていて車幅が広くなりつつも、ボディの厚みも増しているので、室内幅は以前と比べてもそれほど広がっていない。そうなると、やはり横方向の余裕はなくて、3座目を幅380mm以上にするのは実質無理。
細かく見なくても、いまのミニバンやSUVの前席に幅380mmのシートをねじ込むのは不可能に近いとわかるハズ。実際のところ、運転席と助手席の寸法を削ってまで、3座目を作る意味がメーカー的にもまったくないと言っていいだろう。
よほどシンプルなスタイルのジャンルが新しく誕生すれば、もしかしたらベンチシートは復活するかもしれないが、いまのままでは構造的にも、採用意義としてもないというのが実際のところだ。復活してくれれば楽しいのは確実なのだが。