この記事をまとめると
■グッドイヤーはWEC世界耐久選手権LMGT3クラスにタイヤをワンメイク供給する
■グッドイヤーのジョワン・コエルさんに来シーズンに向けての現状を聞いた
■各チームともタイヤのデータはないため、来シーズンは白熱したバトルが繰り広げられそうだ
来シーズンから始まるLMGT3はグッドイヤーのワンメイク
WEC世界耐久選手権では、2024年シーズンから既存のLMP2クラスとLMGTE Amクラスの廃止が決まった。それに代わって「LMGT3」と名付けられたFIA GT3車両によるクラスが設けられることになっている。
今年までLMP2クラスにタイヤのワンメイク供給を行っていたグッドイヤーは、LMGT3クラスへのワンメイク供給が決定。9月に行われた第6戦富士6時間レースでは、グッドイヤーのテスティングマネージャーを務めるジョワン・コエルさんに、来シーズンに向けての現状をうかがった。
「パワフルかつ軽量で、ダウンフォースを稼ぎやすいLMP2クラスに比べて、LMGT3の車両はクルマのキュラクターが真逆です。したがって、求めるタイヤのグリップレベルが大きく異なります。私たちはヨーロッパのGTカテゴリーでタイヤを供給していた経験があるので、そのときに得た知見をベースに開発を進めてきました。また、ウエットタイヤにおいてはウォーマーを使用することができず、早々に発熱できるタイヤの実現を目指しました」
グッドイヤーは9月上旬までに6回のテストを実施。その結果でスペックが決まり、順次生産が進められているとのことだ。
また、世界中では持続可能な社会実現に向けて、さまざまな動きがある。WECをはじめとするモータースポーツも転換期を迎えているわけだが、グッドイヤーがWECに携わり続ける理由はなんだろうか。
「耐久レースはタイヤを開発するにあたって重要なフィールドですし、持続可能な社会の実現に向けても絶好の場になっています。なぜならWECで使用するタイヤは、年々サスティナブル素材の使用割合をアップさせているからです。そのほか、使用するタイヤ本数の削減にも取り組んでいます。これらを行うことで、ひとつのスティントでなるべく長い距離を走ることが可能となり、技術を磨く点にも繋がっています」
さらに、耐久レースではあらゆるコンディションに遭遇する場面が多く、スリックタイヤでも濡れた路面を走行しなくてはいけないことがある。市販車ではオールシーズンタイヤの需要が高まっているが、レースで培った知見がどのくらい市販車の開発にもフィードバックされているのだろうか。
「オールシーズンタイヤだけにとどまらず、レーシングタイヤと市販車用タイヤの開発拠点は同じです。とはいえ、レースで培った知見を100%移行することはできません。特性や性質を見極めていきながら、市販車用タイヤの開発に活かしています」
イベント広場に構えられたグッドイヤーブースでは、来シーズンから導入されるタイヤと、そのタイヤを装着したランボルギーニ・ウラカンGT3を展示。GT3車両はFRからRRをはじめ、異なる駆動方式を採用するマシンたちが混走することになる。
グッドイヤーが開発したタイヤの使い方を始め、データは未知数。来シーズンのWEC LMGT3クラスは、白熱するバトルが繰り広げられることになりそうだ。