先進国と新興国ではクルマに求めているものが異なる
今回も賛否がわかれているようだが、「このまま出るわけがないよな」とか、「ホントに出るの?」といった、ものによってはかなり荒唐無稽ともいえるコンセプトカーが数多く出品された。このようなコンセプトカーについては、海外からくるメディアや来場者にとって自国のモーターショーではほとんど存在しないこともあり、とくに「日本ならでは」として楽しみにしているようなので、来日する外国人観光客がコロナ禍前以上となったいまでは、インバウンドの集客も見込んでいるようにも見えた。
残念ながらBEVにおいては日系ブランドの出遅れ感が否めない状況となっているが、それをフォローするかのように、メルセデス・ベンツ、BMW、BYDがブースを構え、それぞれのブースで日本初上陸モデルを披露。アジア初、世界初といった市販や市販が間近となる現実的なBEVを多数ショー会場で発表しているので、ある意味日本メーカーの展示内容とのコントラストが強まって見えるのも、クルマに造詣が深い人ならば興味深く見えるかもしれない。
スーパーカー協会によるスーパーカーの出品やキャンピングカー、次世代モビリティなど展示カテゴリーが多岐に渡っているのに、破綻していないところは「なかなか絶妙だな」と感じた。とにかく、完成車では海外ブランドの出展が少ないものの、それでもブースを設けていることもあり、プレスデーには英語やドイツ語、中国語などの多言語が久しぶりに飛び交っているのもなんだかうれしくなってしまった。
また、円安などでコスト面でも魅力があるのか、東南アジアのメディアについてグループツアーで招待しているブランドも多く、JMSとなっても、アジア圏におけるオートショーのなかでは、まだまだ注目度が高いことも強く感じた。
現状、中国への短期入国(ビザ取得によりアメリカなどへの入国が面倒になるのではないかとの話もある)はさまざまなリスクがあり、中国のオートショー(11月には広州モーターショーがある)への取材を避けるといった動きもあって、JMSがより注目されたのかもしれない(円安によるコスト面も)。
新型コロナウイルス感染拡大で2021年にショーが開催できていなかったこともあり、久しぶり感も今回のJMSに良い雰囲気を演出していたのかもしれない。
世界的に見ても、各国が自慢の最新技術を披露するような産業博覧会に特化したモーターショーは、時代とともにウケなくなってきているのは確か。新興国は先進国に比べれば世の中でのクルマへの興味は強いし、そもそも新車をその場でたくさん売るためのショーなので、来場者もかなり多い。
ただし、そのような熱から冷めてしまっている先進国では、お祭り色を強めることが生き残るためのキーワードなのかもしれない。JMSは単なるお祭り騒ぎにならないような細やかな配慮も見受けられ、モーターショーらしさを失わないような、抑制が効いているところは筆者としては好感を持つことができた。