さすがにメルセデスも看過できない!? エンブレムの「使用差し止め」まであった4座ガルウイングの魔改造車「ボシャート B300」の衝撃 (2/2ページ)

ガルウイング仕様は世界に1台だけ!?

 このセンスを理解しなかったのか、メルセデス・ベンツはフロントノーズにあったスリーポインテッドスターの使用を差し止めています(プロトタイプでは使っていたものの、市販仕様ではボシャートのマークに変更)。

ボシャート B300のフロントまわり

 それでも、やっぱりヘルトムートのコンセプトはしっかりしたもので、Cピラーを25センチ前進させることで前後重量バランスを最適化。また、リヤオーバーハングも同じく25センチ詰められたことでハンドリングが飛躍的に向上したとのこと。おまけに、3リッターストレート6をツインターボ化、市販モデルは283馬力を発生させることに成功しています。

ボシャート B300のエンジン

 この時代のことですから、KKK製ターボチャージャーにベアーのインタークーラーという鉄板コンビだったのではないでしょうか。

 ちなみに、マニュアル5速という仕様もベンツのクーペといえばATしか思い浮かばない我々日本人にとってはかえって目新しいですよね。

ボシャート B300のシフトレバーまわり

 キモとなるガルウィングですが、クーペをベースにしただけあって後部座席へのアクセスも容易にする幅広いものとなっています。それゆえ、ウインドウガラスには苦労したようで、プロトタイプでは途中で分割されたスプリットタイプを採用。生産型では一枚ガラスになったようですが、ウインドウは下まで下がりきらないはず。

 また、インテリアにもこだわりまくるという当時のトレンドにしたがって、すべて特注のレザーでくるまれ、ガルウィング化にともなって太くなったサイドシルまでレザー張り。フロントシートは、よりスポーティになるようR129のものへと交換されていますが、ここらへんは顧客のオーダー次第でいかようにもカスタマイズできたのかと。

ボシャート B300のインパネまわり

 ヘルトムートは完成したB300をフランクフルトショー(IAA)に出品し、限定台数300台と打ち出しました。それなりに反響はあった模様ですが、顧客のほとんどはガルウィングでなく一般的なヒンジドアを持ったクーペのほうに興味があったようで、市販されたガルウィングモデルはなんと1台のみ! 価格は16万5000マルクで、当時のレートでいえばおよそ4000万円弱。

 オリジナルの300SLが買えそうな金額だったためか、300台という数字にははるかに届かなかったとのこと。もっとも、1台だけの市販ガルウィングはオークションの予想落札価格が4500万円とされていますから、価値としては十分に評価されているといえなくもありません。

 夢があふれるような時代に咲いた、ちょっと変わった大輪の花、ボシャートB300を見ているとそんな感慨にふけるばかりです。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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