魂動デザインは市販車にも受け継がれる
2007年の北米国際自動車ショーで発表されたのが「流雅」(りゅうが)。NAGAREシリーズの第2弾であり、マツダの日米デザインチームの合作。
前部はRX-8、後部はロードスターのプラットフォームが用いられているとされ、パワーユニットは2.5リッターで駆動方式はFF。若者向けのコンパクトスポーツながら、実用的な4人乗りというところが、当時の若者のクルマに対する考え方を反映している。
同年、2007年の東京モーターショーでは「流」、「流雅」、「葉風」に次ぐNAGAREシリーズ第4弾となる「大気」(たいき)をコンセプトカーとして公開。
止まっていても動いているかのように見せるデザイン表現がポイントで、CD値0.25の空力ボディ、マツダのコンセプトカーとしてはおなじみになったガルウイングドア、新世代ロータリーエンジン(800cc×2ローター)の搭載が注目点。
2008年には、パリモーターショーで「清」が発表されている。マツダの日米欧のデザイナーによる合作作品で、若者向け2ドアコンパクトクーペのコンセプトカーという位置づけ。パワーユニットは1.3リッター、全長3770×全幅1685×全高1350mm。ミッションはMTベースの6速ATとされる。
最大の特徴は2枚のガルウイングドアで、この時代からマツダのデザイナーがガルウイングドアを好んでいたことがわかる1台だ。ちなみに国産コンパクトカーにガルウイングドアを採用したトヨタ・セラは1990年にすでに市販化されている。
2010年のロサンゼルスオートショーでマツダがお披露目したのが「靭」(しなり)であった。大型で優雅な4ドアクーペで、「清」に続いてマツダの日米欧のデザイナーによる合作で、マツダのコンセプトカーとして初めて「魂動デザイン」が採用されている。
この「靭」のコンセプトはマツダ6に受け継がれている、とも言えそうだ。
話は2015年に飛び、同年の東京モーターショーで世界初公開されたマツダのコンセプトカーが「RX-VISION」。マツダが考える美しいFRスポーツカーがコンセプトで、翌2016年にはフランスで開催された国際自動車フェスティバルにて、もっとも美しいコンセプトカー「MOST BEAUTIFUL CONCEPTCAR OF THE YEAR」に輝いている。
2017年にマツダの次世代デザインとして発表されたコンセプトカー、4ドアクーペの「VISION COUPE」は当時のマツダの次世代デザインを象徴する作品。2018年、世界でもっとも美しいクルマを選ぶスイス・ジュネーブでのCar Design News主催「第11回 Car Design Night」にて、コンセプトカー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。
伸びやかな4ドアクーペで、性能の高さを感じさせるシルエット、日本の美意識を感じさせる引き算の美学、エレガンスを追求。魂動デザインの極みであった。
と、マツダのコンセプトカーを振り返れば、限りがないのだが、それはマツダのコンセプトカーの最新作である「ICONIC SP」に引き継がれていることは間違いない。現在のマツダ3に代表される、凝りに凝ったエクステリアデザイン、ソウルレッドクリスタルメタリックといった美しいボディカラーも、そうしたコンセプトカーからインスパイアされていることはもちろんだ。マツダのデザインにこれからも期待である。