この記事をまとめると
■各メーカーの鉄板「車名・グレード名」を使えばどんなクルマも売れるのではないか?
■どんなクルマにどの名前を使うかによってはマニアからの反感を買う可能性がある
■車名の響きでまったく異なるイメージのクルマとして意外にいけそうなモデルもある
イメージを大事にするメーカーは伝統名をホイホイと使わない
過日。WEB CARTOPの編集者F氏が、多摩川の河川敷に掘っ立てた拙宅にヘラヘラとやってきた。その際にF氏がヘラヘラと筆者に語った内容は、おおむね以下のとおりだった。
「なんかね、『これを付けときゃ、どんなクルマでもとりあえず売れる』みたいなネーミングがあると思うんすよ、えへへ。たとえばですけど、ホンダの何か売れてないモデルの車名のお尻に『TYPE R』と付けたり、日産の何かに『R』とか『NISMO』って付けたらバカ売れしちゃうみたいな。あとは、売れてないトヨタ車に『モリゾウエディション』なんて付けてみるのもいいですよね、へへ。なんか、そういう感じの原稿書けませんか? えへへ」。
ヘラヘラとした話を聞き終わるや否や、私は奇声を発しながらF氏に正拳突きと中段まわし蹴りを、何発も何発も打ち込んだ。その際の奇声はほとんど人間語の体をなしていなかったが、もしも人間語に翻訳するとしたら、下記のとおりとなっただろう。
「ふざけるな! そんなイージーな話などあるわけなかろう! 仮に何らかの実用的な三菱車に『エボリューション』とのサブネームを与えても、マニア層からは、それこそ『ふざけるな! ナメてんのか!』と反発されるだけであり、非マニア層には『エボリューション』というサブネームの意味も価値も伝わらない。ゆえに、どちらの層にも売れやしない。そ、そ、そんな安易なことばかり考えているから、貴様ら自動車メディアはいつまでたってもダメなのだ!!!」。
そのような自分なりの正義に基づいて正拳突きと中段まわし蹴りを打ち込んだわけだが、それはやはり私の独善的な正義に過ぎなかったようで、私はいま、某警察署の留置場にいる。おそらくはこのまま起訴され、収監されることになると思うが、留置場内で冷静になれたいま、「……そういうクルマもあるかもしれないな」と考えたことを、ここに書き残しておきたい。
まずは日産車に付ける「R」または「NISMO」だが、大半の日産車はそれらを付けてもダメだろう。「アリアR」は意味がよくわからないし、そもそも語呂が悪い。そして「キックスR」と言われてもとくに響くものは感じられず、「セレナNISMO」は、妙にガラの悪いおっさんの間で少し売れる予感しかない。
だが──「サクラR」はちょっとイケそうな気がする。
そもそも「サクラR」あるいは「SAKURA R」という字面がなかなか美しいのに加え、マニア層からすると「……エレキの力で、何らかのすげえ“R”が出来上がったのか? 羊の皮ならぬ、子犬の皮を被った狼か?」という予感があり、そんなことには興味がない一般層にも「よくわからないけど、何か電池とかがすごいことになったのかしら?」という予感を与える力が、「サクラR」という字面と響きにはある。
現在、すでによく売れている日産サクラではあるが、テキトーな新グレードに「R」と付ければ、より売れるだろう。