この記事をまとめると
■ミッドシップ・レイアウトは運動性に優れている
■ミッドシップ・レイアウトは居住空間の面で厳しい
■ユーザーのニーズがお手軽ミッドシップカーを困窮させてしまった
ミッドシップ・レイアウトのメリット&デメリットを再確認
たとえばふたり、あるいは4〜5人が乗るクルマのパッケージングを考えるとしましょう。ある大きさの床スペースを設定し、前方にペダルを配置してその上にメーターパネル(真横にダッシュボード)を置いてステアリングを取り付け、それらに対面した場所にシートをふたつ並べればコクピットが完成。その後ろに椅子をふたつか3つ並べれば後席も含めた「居住空間」ができあがります。
あとは(いや、実際には先に考えるんですけどね)前後のタイヤをどこに置き、エンジンやトランスミッションなどをどのようにレイアウトするかで、そのクルマのキャラクター(=特異性)が決定します。
世の中の大半のクルマのように前輪の間だと居住空間の前方に置いて前輪を駆動させればFF車ですし、後輪を駆動させればFR車になります。一方、ポルシェ911のように居住空間の後方に置いて後輪を駆動させることもできます。いずれにせよ、快適な居住空間を確保したパッケージングと言えるでしょう。
ところが、エンジンやトランスミッションを前後輪の間に搭載するミッドシップ・レイアウトというのもあります。エンジン&トランスミッションという重くてデカいパーツを車体中央に積むため、ミッドシップカーは高いヨーゲインを有することができます。すなわち、クルマがエンジン&トランスミッションを中心に、コマのようにくるくる向きを変えることができるので、コーナーリング性能がアップするのです。
これがミッドシップカーの最大のメリットであり、だからこそレーシングマシンやラリーカーに用いられるレイアウトなのです。
しかし、ミッドシップカーにはデメリットもあります。重くてデカい物を車体中央に置くわけですから、居住空間が犠牲になるのは当然。ですから、ほとんどのミッドシップカーは前席のみの2シーターです(いや、4〜5席の後ろにエンジンを積んでもいいんですけど、その分だけホイールベースが長くなり、ダックスフントのような胴長なクルマになってしまいますよ)。
コーナーリング性能を高めるためにはホイールベースが短いほうが良いので、エンジンに前方へと追いやられたコクピットのふたりは非常に窮屈になってしまいます。
かように「運動性」と「快適性」のせめぎ合いが、ミッドシップカーの辛いところなのです。然るにミッドシップカーという娯楽性の高いクルマを買う世の中の富裕層たちは、「いやいやいや、ミッドシップという特別なスポーツカーなんだから大排気量を積んだハイパフォーマンスは当然。そいつを快適かつラグジュアリーに運転したいもんね! そうそう、ゴルフにも行きたいから、よろしくね!!」と要望。
かくして昨今のミッドシップスポーツカーは、デカくて重くて、しかも超ハイプライスになってしまったのです。