MTの良さは「気持ちよさ」に尽きる!
話はやや脱線するのかもしれないが、「不快」という感情の多くは、「自分が状況をコントロールできないとき」に訪れる場合が多い。逆に言うと、自分が己の意志で状況をコントロールできるのであれば、たとえそれがけっこう過酷な状況であったとしても、人は不快や不愉快をさほど感じない。そういう意味で、MT車は「不快ではない」のだ。
以上で「いまどきあえてMT車を買う理由」あるいは「MT車の運転を気持ちいいと感じる瞬間」は言い尽くしてしまったように、個人的には思う。あとはすべて些細なことだ。
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些細なことではあるが、「MT車をシフトダウンさせる際の気持ちよさ」は、AT車のそれと比べると遥か彼方の高みにある。
ステップATやDCTを7速あたりから4速ぐらいにコンコンコンッ! とシフトダウンさせるのも決して悪くはない。だが、ごく普通の速度でもって4速にて幹線道路などを巡航させているMT車を、「コンッ!」と3速にシフトダウンし、グッと前に出る際のダイレクトな快感は、ATの車のそれと比較してしまってはMT車に失礼だろう。6速から5速、あるいは5速から4速も悪くないが、個人的には「4速→3速」に、なぜか最大の快感を覚える。
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そのほかでは「……自分はいま、MT車の運転という“伝統芸能”をしっかり継承できているなぁ……」と思ったとき、優越感というほどのものではないが、ちょっとした誇らしさというか、気持ちよさのようなものを感じる。
警察庁が発表している「運転免許統計」によれば、2022年に指定自動車教習所を卒業して普通免許を取得した人のうち、MT免許を取った人の割合は27%でしかなかったとのこと。要するに、「若い人のほとんどはMT車の運転ができない(運転の仕方を知らない)」ということであり、おそらくは30代ぐらいの「まあまあ若い人」も、状況は似たようなものだろう。
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そのことを責めるつもりはないし、MT車の運転ができる自分を自慢するつもりもない。先ほど申し上げたとおり、昨今はATの性能もずいぶん上がっているため、無理にMT車を買う必要などどこにもないからである。AT車、ぜんぜん上等である。
だが、「確実に失われていく伝統的な技能を、俺は継承できているのだな……」と思ったとき、気持ちよさというのとは少し違うが、少し誇らしく、少しうれしく思うのだ。
だからといって、若い人々に「キミもMT車に乗りなさいよ。気持ちいいから!」みたいなお説教をしてもうざがられるだけなので、決して言わないわけだが。