車名にまつわる訴訟には言いがかりも多い
ルノー・ゾエ
ヒトの名前を使った車名というのも、考えてみればゴタゴタしそうです。実際、ルノーのEV「ゾエ」は、フランス在住の2家族から名称の使用停止を訴えられました。彼らはともに、ゾエという名の娘さんがいるとのことで「学校でいじめの原因になる」として裁判所に届け出たのです。
たしかに、学校でわざと体をぶつけてきて「ありゃ? エアバッグ開かないの?」とか「ゾエちゃん、そろそろオイル交換じゃねーの、ケラケラケラ」なんてやられた日には可哀そうですもんね。実際、クリオと名付けられた女児はクルマと一緒はイヤだと、3歳の洗礼前にマルゴという名に変更した例もあるとか。
とはいえ、ゾエという名前はフランス女性の中でも11番目に多いもの。裁判所も「ルノーがゾエの名を使用しても、個人の生活が脅かされることはない」と判断。ルノー側の勝訴と終わりました。
が、家族側は憤懣やるかたなく「ゾエがたまたまクルマの商品名だったからよかったものの、これがトイレのブラシや大人のオモチャだったりしたらどうすんだ!」と主張。大人のオモチャは気の毒ですが、それこそフェラーリが指摘されたのと同じく、命名前にリサーチするというのも親の役目、ではないですかね(笑)。
アストンマーティン・ヴァンテージGT3
こちらは訴訟まではいかなかったものの、かのポルシェがいかにケツの穴が小さいかを露呈したエピソード。そもそもは、2011年にアストンマーチンが市販車でなくレースカーとしてヴァンテージGT3をリリースしたことに端を発しました。
噂によれば、ここにポルシェが「おいおい、GT3はウチが2001年から使ってんだけど」とアヤをつけたとのこと。最初、アストンマーティン側はシカトを決めていたらしいのですが、GTレースを牛耳るFIAだか、SROの耳にも届いたことで対処せざるをえないことに。
「GT3はカテゴリー名称であって、そこに参戦するなら付いてて当然」と真っ当な反論。ポルシェのリアクションは不明ですが、「車名としてすでに登録してある。使う以上は、それなりの誠意(金)を示したらどうだ」くらい圧が強めだったのではないでしょうか。
これにはアストンマーティンも手を焼き、仕方なしにFIAに直訴。彼らのもとにはフォードやジャガーといったGT3カテゴリーに参戦予定のメーカーからも車名について「ポルシェからガタガタ言われてる」とクレームが届いていたのです。で、FIAは「GT3の名称に文句あるなら、レースに来るな」とばかりにポルシェを一喝。バイザッハのケチくさい連中はスゴスゴ退いたというわけ。
世界中で20シリーズ以上が開催されているGTカテゴリーですから、参戦するGT3マシンからみかじめ料をとったらボロ儲け、ポルシェがそんなバカな夢を見たのか知りませんが言いがかりも甚だしい。これだから、やつらがレースで勝っても諸手を挙げて喜ばないファンが大勢いるのでしょう。
いずれにしろ、車名に関するクレームはこうしてみると「言いがかり」的なものに終始しているようです。上述のプジョーにしても正当な主張ではありつつ、なにもそこまで感がなきにしもあらず。これからも、クルマ業界のネーミングにはさまざまなエピソードが生まれてくることは間違いありませんね。