この記事をまとめると
■車名にまつわる話はいろいろあるが訴訟にまで発展したエピソードのなかにはおもしろいものが多い
■とりわけフェラーリは何かにつけターゲットにされやすいようだ
■車名に関するクレームはこうしてみると「言いがかり」的なものが多い
ポルシェ911はプジョーの「待った」で誕生した!
車名にまつわるエトセトラは、それはもう興味深いものがたくさんあるのですが、やっぱりシャーデンフロイデ(他人の不幸は蜜の味)、ゴタゴタもめたり、訴訟にまで及んだエピソードが面白い。
たとえば、ポルシェが発売した直後の901にプジョーが待ったをかけ、911に変更させられたというのはあまりにも有名かと。これは3桁の数字で間をゼロにしたものを片っ端から商標登録していたプジョーに分があったのですが、不思議なことにフェラーリの308には文句をつけませんでした。一説によれば、両社の間にピニンファリーナが仲介に入ったとかなんとか。そんな車名にまつわるゴタゴタの顛末をピックアップしてみました。
フェラーリ・テスタロッサ
2017年にドイツの玩具メーカーAutech AGが「テスタロッサという名称は、すでにフェラーリが過去5年間のうちに販売(使用)していない」ゆえに、自社のおもちゃにテスタロッサの名前つけても問題ねーだろ、とデュッセルドルフの高等裁判所に申し立てを行いました。
これがまかり通ったとすると、マラネロはテスタロッサの商標権利を失い、逆にAutechなど他社から「テスタロッサの名前は使わんでくれ」と訴えられる可能性も!
ですが、ドイツの高等裁判所より格上の欧州連合司法裁判所が下した最終的な司法判断は「テスタロッサ自体は1990年代以降に生産・販売されていないが、フェラーリは部品供給を続けており、ブランド名称として(テスタロッサを)継続使用する権限が認められる」という、考えてみたら当たり前の判決。
Autech側は、2011~2017年の間にテスタロッサの部品はおよそ200万円程度しか販売されておらず「不十分ではないか」と反論したものの、「世界中で7000台程度しか走っていないから少なくて当たり前。しかも高級、かつ高性能なスポーツカーなので日常的に部品を交換するものでもない」と論破(?)。無事にテスタロッサの使用権を守ることができたのです。
フェラーリ・プロサングエ
テスタロッサでは自社の権利を守れたものの、最新SUVのプロサングエでは発売前からケチがつきました。というのも、プロサングエ(純血)という名称はすでにアンチドーピングを啓蒙する慈善団体が2013年から使用中だったのです。
ケチをつけられたマラネロはすぐさま「たいして活動もしてねーんだから、グチャグチャ言うんじゃねーよ」とばかりに活動実績の少なさを指摘。テスタロッサの部品販売の少なさを指摘されたことが役立ったようです(笑)。が、慈善団体側も腰が強かった。「は? アディダスと一緒に世界中でアンチドーピングパック売ってんですけど」。そのほか、ケニアでもって慈善キャンプ活動をするなど、フェラーリ側がひるむような活動内容だったのです。
それで、プロサングエ発売前に両社が話し合いの場を設けたのですが、あっさり決裂。「あいつら、どうして発売前に商標確認しねえんだ」とは団体の代表、マセッティ氏のコメント。
ともあれ、顛末は詳らかになっていないものの、プロサングエは発売されて大好評を得ています。一方のプロサングエ財団もまた活動を継続しているようですから、水面下でなにかしらの「手打ち」があったのかと。両者ともにイタリア人ですから、ことによるとローマ法王あたりが仲介に入ったのかもしれません。それでなくとも、マラネロは法王にベッタリですからね。