この記事をまとめると
■バス運転士不足により路線バスの減便や路線廃止が相次いでいる
■運転士不足の解決策は「自動運転」とする意見もあるが現実的な解決策とはいえない
■すでに公共交通機関の自動運転が営業運行している海外では新たな問題も起こっている
運転士不足が減便や路線廃止を招いている
2023年度事業年度締めでの下半期がスタートした10月1日、日本全国で路線バスの大幅減便や、路線自体の廃止が相次いだ。そもそも事業者の多くは以前から10月1日より減便や路線廃止を予定していたのだろうが、9月中旬に大阪府内で路線バスを運行していた事業者が12月20日をもってバス事業を廃止すると発表。つまり、その事業者が運行している路線すべてが廃止されることが発表され、路線バス業界に大きな衝撃が走った。
路線バスの減便や路線廃止が相次ぐ大きな要因は、バス運転士の深刻な不足である。そもそも十分な人員で運行していたわけでもないが、新型コロナウイルス感染拡大期でも公共輸送機関として、路線バスは鉄道などとともに運行を続けた。そのなかで、運行中に新型コロナウイルスに感染する運転士が続出したりもして、運転士の離職が相次いだことで人員不足に拍車がかかった。
運行中の新型コロナウイルス感染はいまでも頻繁に各地で起こっており、事業者としても、ある程度運転士が感染して運行できない状況を想定しながら日々の運行管理も行わなければならず、その意味でも減便が目立ってきていると筆者は考えている。
メディアでは高校を卒業したばかりの新卒者を採用し、大型二種免許取得可能年齢となった時点で免許を取得させて乗務員デビューさせる様子のリポートといったものを見かけることがある。若年層に興味を持ってもらい、路線バス業界にきてくれることは歓迎するが、それに見合った報酬、つまり給与が十分ではないので、将来家庭を持ったときなどに生活できないとして離職されてしまうリスクは十分高いといえるだろう。
テレビのワイドショーなど、運転士不足のテーマを取り上げると、コメンテーターの多くが「問題解決は自動運転しかない」とコメントしている。確かに日本でも各地で自動運転バスは実証実験も含めて多数運行されているが、日本全国で今後短期的にくまなく自動運転による路線バスを運行することができるのかといえば、それは間違いなく無理だろう。
タクシー、トラック輸送でもすぐに「自動運転がすべてを解決してくれる」との考え方が広まっているともいえるが路線バスの減便や路線廃止問題も含め、現実的な解決策とはいえないだろう。