この記事をまとめると
■BMWが「ジャパンモビリティショー2023」にノイエクラッセを展示した
■もともと「ノイエクラッセ」とは1960年代に誕生した新型セダンシリーズを指した社内コードだった
■「ノイエクラッセ」の振り返りをしたところで現代版ノイエクラッセを眺めるとやや物足りない
新世代のBMWとして話題のノイエクラッセ
BMWがフランクフルトショーで発表し、ジャパンモビリティショーにも出品したEV、ノイエクラッセが話題に上がっているようです。
電動システムやサステナビリティ、あるいは次世代のiDriveなど「新たな時代の幕開け」を声高に主張しているものの、目新しさには欠けるような気がします。スタイリングやハードウェアこそ最新のモードをまとっているのかもしれませんが、つい先日イタリアのコンコルソ・ヴィラ・デステむけに再現された50年前のコンセプトカー「BMWガルミッシュ」のほうがよっぽど新鮮に映るのはどうしたことでしょう。
同社によれば今回のノイエクラッセは、「自らを再発明するBMW」とのことですが、まったくもって広告屋のたわごとにしか聞こえないのです。
そもそも、ノイエクラッセ(Neue Klasse=New Class)というのはBMWが第二次大戦後に倒産寸前に追い込まれた際、窮余の一策として投入されたBMW1500に端を発する新型セダンシリーズを指した社内コード。BMWは、ノイエクラッセで成功を収めることができなかったとしたら、今頃はメルセデス・ベンツかインドや中国の資本に売り飛ばされていたに違いありません。
なにしろ、ノイエクラッセを出すまで、彼らの売り物といったらイタリアで買収してきたイセッタと、時代遅れもはなはだしい大型サルーンの両極端しかなかったのです。むろん戦後の取り決めで、航空機エンジンの製造ができなくなってしまったことも、バイエルンのエンジン屋にとっては大きな痛手だったはず。
そんな彼らに救いの手を差し伸べたのは、皮肉なことに大戦中にナチスの強制収容所からユダヤ人を引き取り、奴隷労働をさせて富を築いたクヴァント一家。ここらへん胸くそ悪いので省略しますが、とにかくBMWは血路を開くための資本をゲット。それまで作りえなかった新たなクルマに心血を注ぎ始めたのでした。