BMW躍進のカギを握った「ノイエクラッセ」! 昭和オヤジには「今のノイエクラッセ」はちょっと違う!? (2/2ページ)

BMWの新時代はいつも「ノイエクラッセ」から始まる

 そんなこんなで1961年、ノイエクラッセ市販車のトップバッター、1500がリリースされました。現代の目から見れば、フロントに4気筒エンジンを縦置きした普通のセダンですが、大衆からは喝采をもって迎えられたといいます。

 前述のとおり、BMWにはイセッタと大時代的なサルーンしかなく、クヴァント資本下で最初に作った700もイセッタの空冷エンジンを積んだ「時間稼ぎ」みたいなもの。メルセデスやフォルクスワーゲンにはないモダンなデザインをはじめ、エンジン屋らしいパフォーマンス、それでいて庶民に寄り添った価格ですから、ウケないはずもありません。

BMW 700のフロントスタイリング

 市場の好反応にBMW首脳陣が上機嫌になったのは言うまでもなく、ここではじめてノイエクラッセを社外へのプレゼンテーションワードとして採用。戦後、BMW躍進の幕が切って落とされたといっていいでしょう。

 ノイエクラッセは、その後グイグイと進化し続けました。1963年には1773ccの1800が登場し、1966年には1990ccの2000など、1972年に初代5シリーズ(E12)が登場するまで、BMWの屋台骨を支え続けたことになります。

BMW 2000のフロントスタイリング

 途中、ツーリングカーレースにエントリーしたり、ベルトーネによる優美極まりないボディが与えられた2000CSクーペや、2ドアセダンの2002などバリエーションも豊富で、なにより強烈な説得力を持っていたかと。

 そんな振り返りをしたところで現代版ノイエクラッセを眺めてみると、新たな時代の幕開けとか自らを再発明などと言われても、どこか空しく響いてしまうのはオールドスタイルな筆者だけではありますまい。それとも、エンジニアたちが待ったなしの開発を迫られていた当時と、EV時代の現代を比べるのが間違っているのでしょうか。

BMWノイエクラッセのサイドビュー

 AI画像をリアルに見せられているかのような現代版ノイエクラッセを見ていると、そんな戯言じみたことが頭をよぎって仕方ありません。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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