ぶっちゃけそれだけで生活できるの?
■フリーランスの自動車ライターに必要なものは?
個人的には「PCとオフィスチェアはケチらない方がいい」を強く実感しています。ちなみに、筆者愛用のPCはMacBook Pro16インチを、机は独立したときからずっと使っているニトリのアウトレット品(たしか2万円くらいで購入)、オフィスチェアは数年前に思い切ってアーロンチェアを導入しました。まさにお値段以上!!
○スマートフォン:すでにほとんどの方がお持ちだと思いますが念のため。
○名刺:せっかくなので、渡した相手に印象に残るデザインにしてもみてください。屋号を決める必要もあります。
○パソコン:最新のハイスペックマシンはいりませんが、長時間使用するので定期的な買い替えは必要だと思います。
○長時間座ってもつかれないオフィスチェア:ここ、大事です。高くても長時間座っていて疲れないオフィスチェアを選んでください。新品が厳しいなら程度の良い中古でもOK。
○ホームページやnote:相手が検索して仕事が舞い込むこともあるので必須です。こだわるなら屋号と合致するドメインを取得してもいいかもしれません。
○カメラ:できれば一眼レフが理想ですが、ここは予算次第です。
○銀行口座:個人とは別にフリーランス用の口座が必要です。
○クルマ:あえてインパクトのあるクルマを所有するのも手です(それがきっかけで仕事が舞い込むこともありますし)。都市部であればレンタカーやカーシェアの方が割安な場合も。
■フリーランスの自動車ライターって「食っていけるの?」
おそらく、ここが気になる方が多いのではないでしょうか? 専業のライターとして果たして「食っていけるのか?」問題。
家族がいる、または独身か、賃貸か実家暮らしか……などなど、置かれている境遇にもよりますが、専業のライターでは個人的にはかなり厳しいと感じています。
とくにライターデビュー時は少ないギャランティで多くの文字数を書かなければならなかったり、手間の割にギャランティが安かったり……と苦労が報われない時期が続きます。
原稿1本あたりのギャランティが仮に1万円(税別)だとします。月30本書いたとして30万円+3万円(消費税)−3万630円(源泉徴収税)=29万9370円が手取り分です。後述しますが、少なくとも、これまでは。
※媒体の規模などにもよりますが、ライターデビューしていきなり1本1万円の記事が書ける可能性はかなり低いように思います。
しかも、月30本となると1日1本ずつ書き上げてもほぼ毎日休みなしですから、丸1日机にかじりつきっぱしになります。当然、休みはありません。下手をすると年末年始も仕事です。また、1社だけに依存すると、突然仕事が打ち切られる(可能性は大いにあります)と、翌月から収入はゼロです。
安定した収入が見込める本業があり、副業としてライターをやる「兼業ライター」がいいように思います。既婚者であれば、家庭の主な収入はパートナーで、こちらはサポート側……くらいが個人的にはいいかもしれません。
■フリーランスの自動車ライターも避けて通れない「インボイス制度」がスタート
先ほど『原稿1本あたりのギャランティが仮に1万円(税別)だとします。月30本書いたとして30万円+3万円(消費税)−3万630円(源泉徴収税)=29万9370円が手取り分です。少なくとも、これまでは』と記しました。
10月からは免税事業者(基準期間における税込みの売上高が1000万円以下)であっても納税義務が生じるようになりました。どこかで耳にしたことがあるであろう「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」がスタートしたからです。
ライターとして仕事が決まったとき、クライアント側から「適格請求書発行事業者の番号を教えてください」と聞かれる確率が高いと思われます。ここで「ありません」と答えると「これから登録する予定はありますか? ありませんか?」と問われるはず。
あくまでも筆者の感覚値ですが、現時点では「今後も予定はありません」の選択肢はほぼないと感じています。実質的に「適格請求書発行事業者の登録申請手続が必要」の一択です。この登録番号を明記したものでないと、インボイス(適格請求書等)としての効力がないのです。つまり、請求書として処理してもらえません。
免税事業者から、新たに「適格請求書発行事業者=課税事業者」として登録した場合、納税義務が生じるため、実質的に自身の取り分が減ります。これまでは消費税の納税を免除されていた分(つまり懐に入っていた)を国に収めなければならないのです。
ただし、フリーランスの場合は開業から2年間は要件を満たせば免税事業者として扱われますし、6年間の経過処置があるので、すぐに消費税分の全額を納付するわけではありません。この期間に頑張って仕事を増やし、ギャランティを上げていければいいのです!(……と、このくらいの気概が必要です。ほんとに)。
■まとめ:それでもフリーランスの自動車ライターになりたいとしたら……
人生いちどきり。やってみなければわかりません。まずは兼業ライターからスタートして、仕事が軌道に乗ってきたら独立して専業ライターになる方法もありだと思います。
筆者の実体験として、独立する前にやっておいた方がいいことがあります。それは「ローン」です。
ローンを組んででも買いたいクルマがある、家が欲しい。とくに後者はフリーランスになると本当に大変です。なかなか住宅ローンを組ませてもらえないばかりか、ようやく組めたとしても融資額が低かったり、額が低くても長期のローンでないと審査が通らなかったりします。頭金ゼロのフルローンなんて論外です。
融資する側は年間の売上げには目もくれません。確定申告した際の「所得金額」を重視します。仮に1年間の売上げが500万円として、経費を差し引いた所得金額が250万円だったとしたら、この「250万円」で融資額を査定してきます。過去3期分の平均値が基準となるので、この額が低いと、それだけ住宅ローンの査定額が厳しくなるのです。
「メガバンク」といわれる大手銀行ほど住宅ローンの審査が厳しく、金利が高いフラット35などを使えば融資が通る可能性もありますが、その分、月々のローンに金利分(プラス数万円)が上乗せされます。これが何十年も続くわけですから馬鹿にできないのです。
かといって、ものすごく稼いでいるから住宅ローンがすんなり通るかというとそうでもありません。テレビ番組などで「芸人、家を買う」という企画がありますが、名の知れた芸人さんが住宅ローンを組む際に苦労している場面を見たことがあるかもしれません。「いまは好調でも、来年やそれ以降はわからない」とみなされるわけです。
ひょっとしたらこの先、売れなくなるかもしれないし、体調を崩して休業するかもしれない。基本的にはフリーランスもこれと同じです。悲しいかな「フリーランスは安定した収入が得られにくい=社会的な信用度が低い=ローンの支払い能力が低い」位置づけにあります。
老婆心ながら「フリーランスの自動車ライターにはなりたいけれど、近い将来結婚を予定していて、家も買うつもり」といった境遇にある方は、パートナーの方と超真剣に相談してみてください。ここをうやむやにするとあとで大問題になります。
お相手の方の実家が裕福だったり、社会的な信用度が高い公務員や、士業や看護師などの国家資格を持っているとペアローンを組むときに有利です。しかしその分、頭が上がらなくなることを覚悟しておいてください。自身の足りない分(社会的な信用度)を補ってくれているわけですから……。