最初のレースはまさかのハッピーエンドに!?
いよいよ本番のステアリングを握ることになり、お馴染みの筑波サーキット、それも真っ暗な夜のスティントへ向けて出発した。
今回の出走にあたって、レース前に何度も走ってきた先輩たちから受け継いだ技は以下だ。
・回転は6000以下、できれば5500でシフトアップ
・ヒール&トゥは禁止
・燃費は6.5km/Lくらいを目指す
・タイムは1分15〜18秒くらいで周回
・レースだから自分のラインで走れ。抜かれないようブロックしてもいい
言ってることはとても単純。単純だが、これがまた難しい。踏み散らかせば燃費が悪化するし、のんびり走ればレースにならない。このレースではインカムを使って通話ができるのだが、ピットからは案の定、聞きたくもないセリフが飛んでくる。
「2位とのギャップが20秒」「15秒」「8秒」「5秒」と、周を重ねるごとに追い上げられているのだ。実際、5周ないし6周くらい走ったところで呆気なくぶち抜かれてしまった! 「ほら見たことか」と、自分を責めたが逆に追う立場になったので、先人たちの苦労を無駄にして申し訳ないが、少し気が楽になったのも事実。
と、気合いを入れ直した矢先アクシデント発生! 1台が最終コーナーでコースアウトしてしまい、黄旗からのセーフティカーが入ってきた。お馴染みの「追い越し禁止」のやつだ。
しかし、これはいいぞ、かなりいい。なんせ、追い越し禁止で80km/hほどの速度で、前走車を抜かさないようにドライブするだけなので、何も恐れるものはない。それにもう自分のスティントの折り返しを過ぎている。少し味気ないが、これで順位が大幅に下落せずにバトンを次に繋げる。2位で申し訳ないが。
ただ、ここで奇跡が起こる。なんと1位だったクルマがピットに入ったのだ(ピットクローズされていなかった)。つまり、何もしてないのにまた1位に返り咲いたことになる!
こうなればもうこっちのものだ。セーフティカーが退いてからあと2周か3周抜かれなければ、「1位で出てって1位で帰ってくる図」が出来上がる。あれ? 完璧じゃないか!?
そして思惑通り、もうすぐピットインという頃合いでセーフティカーがいなくなった。あとは走り好き小僧の意地でとにかく踏みちぎって逃げた。セーフティカーランのおかげもあって、燃費が稼げたのも大きい。なのでその分とまではいかないが、可能な限り踏みっぱなしで逃げた。
その後無事にピットイン。TUBEの松本さんへとドライバー交代と給油を行い、ボンクラ井上、真夏の大冒険が無事に幕を閉じた。クラッシュせずに、順位も大きく交代せずに済み、ひとまず肩の荷が降りた。さあ、ここからは”ガス欠せずに”何位でフィニッシュするかだ。後半の2名に期待だ!
松本さんに交代してからもレースはその後順調に進み、いよいよ中谷さんへ最後のドライバー交代を行う。この時点での順位は、ずっと1位キープとまではいかず、8位ほどに下落。こうなれば、ガソリンに気をつけつつあとは追い上げるだけだ。
しばらく経ったところで、残りのガソリン残量や時間を考慮して、ピットからは「もっと踏んでいい」と、中谷さんに指示が飛ぶ。そして、残り時間が減るにつれて、なんと99号車の順位もじわじわと上がっていく。チームによってはこのタイミングでピットに入るチームなどもいたせいで、最後まで順位がわからないが、順位が上がっているのは間違いない。
そして残り3周ないし2周あたりで、ついに99号車は4位の位置につけ、3位とのクルマとテールトゥノーズ! 一瞬の隙があれば表彰台だ。
しかし、今回のレースは中谷さんの猛追も虚しく、結果は4位でフィニッシュ(暫定)となった。しかし、昨年のガス欠風景しか見ていなかった井上にとって、無事に完走しただけでも素晴らしいこと。
ただこのレース、なんと6位まで表彰が受けられるという。ボンクラ井上、何もしてないのに初戦でいきなり4位で表彰台に上がるという贅沢すぎる貴重な経験をさせてもらった。さらには、「スタートから1時間経過時点での1位に送られる」という特別賞、「BRIDE賞」というのも頂いた。
「レースに勝つとこの景色が見られるのか!」と、まさか自分がこんな場所に上がる人生がやってくるとは1ミリも考えていなかったので、なんとも不思議な気分だ。テレビでよく見る「シャンパンファイト(中身はスパークリングジュース)」なんていう機会も頂き、いきなり忘れられない経験ばかりを、この「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」で経験させてもらえた。あまりにもデキ過ぎているデビュー戦だったので、なんだか申し訳ない気持ちが出てきたのと、「シャンパンファイトって難しいなオイ!」という感想が浮かんだ。事実、シャンパンファイトの動画を見たら、非常にマヌケであった。
最後にひとつ。「4位でフィニッシュ(暫定)」という書き方をあえてしたのは、レース後の審議により、なんと我々の99号車は3位に繰り上げという結果になったからだ。細かい内容は割愛するが、最終スティントの中谷さんとの駆け引きのなかで、3位のクルマとアクシデントがあったようで、それが結果に反映され、順位が入れ替わったとのこと。
なので、表彰台では4位であったが、なんとなんと、デビュー戦で3位という実績を残す形となったのだ。チームの人たちのおかげなので、もはや数合わせで名前だけ貸したくらいにしか思ってないが、「お前が走れ」から始まった「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」は、初戦から美味しい思いばかりさせてもらった。
装備もライセンスもあるので、次回以降の開催はぜひもっと腕を磨いて、「俺が何かした」という実績を少しでも残せるような走りをしたいといまから模索中だ。走れるかどうかは別だが。それと、さすがに4人以上というレギュレーションなのはもう覚えたので、”脱ボンクラ”ということでひとつお願いしたい。
また、このような企画を34年も続けて頂いているマツダをはじめ、協賛企業の皆さまにはこの場を借りてお礼をしたい。ありがとうございました!