ルート配送はきめ細やかなルールが存在
もちろん、そんなバクチのような仕事ばかりではない。同じ荷物を決まった場所に運ぶというルート配送も存在するし、手積み手おろしがない仕事もある。しかし、ただ運転するだけという生ぬるいものではない。ゆるい仕事になればなるほど、きめ細やかなルールが存在するのだ。
荷主の機嫌を損なうと簡単に出入り禁止にされてしまうし、事故を起こした場合は自費で直さなければならないという会社も多い。もちろんつねに事故の危険性をはらんでいるため、トラックドライバーは文字どおり体を張った職業なのである。
そんな彼らのことを”底辺”だと呼ぶ人たちは、きっとトラックドライバーには低学歴の人が多いということを言いたいのだろう。たしかに世間では高学歴がものをいうが、トラックドライバーの世界では勉強よりも、気合いや社会経験が豊富な人材のほうが歓迎されるのだ。たとえ中卒であろうとも、世間の荒波に揉まれて育った人間のほうが向いているのである。
なにごとも、やってみなければわからないもの。経験がないからこそ、先入観からトラックドライバーが底辺だと思ってしまう気持ちもわからないではない。しかし、内情を知らずして否定してしまうというのも、いかがなものだろうか。批判したいのであれば、まずは自身で体験してみることが大切。どれだけ華やかで気楽そうに見えるような仕事であっても、そこには人知れぬ苦労や壁が存在するからだ。そんなことは、高学歴と呼ばれるほど優れた知識を持ち備えた人であれば、言われなくてもわかることだろう。
しかし、どうしても程度の低いトラックドライバーが存在することも事実。そこには、トラックが好きでハンドルを握っている人と、仕方なくトラックドライバーになった人たちの違いが存在するように思えてならない。トラックが好きで乗る人は、もちろんトラックを大切にする。トラックを大切にするということは、運転にも気を遣い、荷物を大切に運ぶのだ。
毎日のようにトラックが関係する事故のニュースを目にするが、トラックに大金を注ぎ込んで飾った「デコトラ」が加害車輌となるケースは少ない。
しかし(漫然と)、職業ドライバーとして乗るような人たちには、トラック乗りという自覚や誇りなどを持ち備えていない。だからこそ横柄な運転を繰り返し、不注意から事故を起こしてしまうのだ。そのような人たちがいる限り、トラックドライバーのことを悪く思う人が存在するのは当然である。
ぜひとも兜の緒を締め直し、お客様から預かった大切な荷物を運んでいる、高級外車が軽く買えるほど高価なトラックに乗せてもらえている、そして自分が運んでいる荷物を楽しみに待ってくれている人がいるという事実をひとときたりとも忘れることなく、誇りを持ってハンドルを握ってほしいと願うばかりである。