この記事をまとめると
■トラックドライバーを「誰にでもできる仕事」だと言う人がいる
■もちろんそういった事実はなく、必要な知識や能力が多数
■元トラックドライバーが詳しく解説する
「追っかけ」は時間との戦い!
わたしたちの暮らしに欠かすことのできない業種は、世の中にたくさん存在する。日本の物流を担うトラックドライバーもそのなかのひとつであるが、なぜか「誰にでもできる底辺の仕事」だと世間から揶揄されることが多い。果たして、トラックドライバーとはそのような仕事なのだろうか。過去に大型トラックのハンドルを握って全国各地を駆けまわった経験を持つ筆者が、その内情に触れてみたいと思う。
ひとくちにトラックドライバーと言っても、さまざまな形態のものが存在する。決められたルートで荷物を運ぶ仕事もあれば、積荷によって行き先が変わるものなどまちまちだ。運ぶ荷物によっても、そのじつは大きく変わるのである。まずは、その部分から進めていこう。
トラックの荷物といえば、鮮魚を思い浮かべる人が多いだろう。彼らの大半は漁港で水揚げされたばかりの鮮魚を積み、高値がついた市場に納めるというもの。つまり、行き先はそのときになってみないとわからないということになる。しかも、天候によっては漁が行われず、海が時化ていれば魚が上がらない。そのため、3日程度の待機はよくある話。その日に必ず仕事があるという保証などなく、そして状況に応じて日本全国どこにでも走るという覚悟ができなければ務まらないのである。
鮮魚や青果を、必ずセリに間に合わさなければならない仕事もある。そんな彼らのことを「追っかけ」と呼ぶのだが、延着してしまうと積み荷の価格が半値以下になってしまうなど、とにかくハイリスクな仕事なのだ。その分稼ぎは他の荷物に比較すれば良くなるのだが、文字どおりハイリスクハイリターンといったところ。
近年では過積載や規制が厳しくなったことで追っかけ仕事は少なくなったが、昔ほどではないにせよハードな稼業に励む猛者たちは存在する。鮮度が命のトラックドライバーたちは、つねに時間と戦っているのだ。
そんな鮮魚や野菜の現場では、いまなお手積み手おろしというアナログなものが多い。10トンもの荷物を自身の手で積み込み、そして走行中の振動に耐えながらトラックを走らせなければならないのだから、ヘルニアになってしまうのも無理はない。
もちろん眠気との闘いもあるし、事故や工事渋滞などが発生すれば、即座に時間を計算してルートを変更しなければならない。いくら夜を徹して走ったとしても、延着してしまうと大赤字になることも珍しくないのである。果たして、そんな仕事が誰にでもできるだろうか。