速度が安定しない乗用車に苦しめられることも
一番困るのは速度が安定しない乗用車。走行車線を90km/hで走行中、前走する乗用車に追いついたために追い越し車線に移る。そして90km/hのまま乗用車を追い越しにかかるのだが、並走しているタイミングで乗用車の速度が上がるのだ。これは緊張のあまり無意識にアクセルを踏み込んでしまうという運転に不慣れなドライバーにありがちな行為なのだが、そのまま100km/hぐらいにまで速度を上げてくれるのなら、なにも問題はない。しかし、そのような乗用車には期待できない。90km/hで並走されたまま、大型トラックが走行車線に戻れなくなってしまうのだ。
大型トラックのほうはリミッターがあるため、それ以上の加速ができない。そうなると追い越しを諦め、アクセルを緩めて乗用車の後方につくしかない。しかし、そうなると乗用車は安心したのか、再び80km/h走行に戻ってしまうのである。これは、現代で言うところのあおり運転となんら変わらない。むしろあおり運転を誘発してしまうケースであるため、ぜひとも自車の速度を把握する力を養って欲しいところである。
このような話をすれば、「10km/hぐらい我慢すればいいのでは」と言われてしまいそうであるが、そんなに単純なものではないのだ。
一般車のように1時間や2時間の移動であれば、確かに大きな影響は存在しない。しかし、長距離ドライバーは10時間以上をかけて高速道路を走ることも珍しくないのだ。80km/hで10時間走るとなると、移動距離は800kmとなる。しかし90km/hで走行できれば、900kmになるのだ。この100kmという大きな違いは、いくらトラックに同情的でない人であってもおわかりいただけるだろう。たかが10km/h、されど10km/hなのだ。だからこそ、大型トラックはわずかな速度差であっても追い越しせざるを得ない。
しかし、課題は乗用車だけではない。大手運送会社の路線便も大きな妨げとなる。看板を掲げた大手のドライバーは時間的に余裕のある運行が組まれているため、社則で高速道路は80km/h走行と決められているケースが一般的である。乗用車と違って速度が変わらないため、追い越しにかけては安心できるのだが、問題は上り坂。大手路線便の荷物は軽いため、平坦路でも登坂車線が存在するような上り坂であっても、80km/hで走行できるのである。
他方、鮮魚や野菜、一般雑貨などを積んだトラックはそうはいかない。定量積載であっても上り坂になると速度が保てないため、追い越しをかけても追い越すことができない、というシーンが多々発生するのである。
これもひとえに、スピードリミッターによる弊害だ。危険回避とは、なにもブレーキやハンドル操作だけではない。加速も立派な手段なのである。それを奪われた現代の大型トラックドライバーは、日々ストレスを抱えながらハンドルを握っているのだ。
そんなドライバーを苦しめる規制も、もとを辿れば一部の不良トラックドライバーの愚行が導き出したもの。業界がより良くなるためにも、常日頃から安全運転を心がけてもらいたいと願うばかりである。