大人気の機内体験ではコクピットにも潜入
さて、HondaJet機内取材を待つメディアの列は少しずつ進み、ようやく筆者の搭乗時間が迫ってきた。タラップを登ってHondaJetエリートIIの機内へ足を踏み入れると、正直なところ機内は決して広くない。身長181cmの筆者ではまっすぐ立つことは厳しく、身体をかがめながらまずは客席へと進んでいく。
客席は中央に通路があり、左右にシートが並んでいる。モックアップでは片側は対面式、もう片側は前後とも機体前方を向いたレイアウトだ。今回、展示されているモックアップは、HondaJetエリートIIの2種類ある内装のうち「オニキス」のほう。暖かみを感じさせるアイボリーベージュを基調としており、秋の木洩れ陽のような穏やかでリラックスできる空間を演出している。
ただ、機体の内壁は上方へいくほどラウンドしている卵形断面となっており、圧迫感もそれなりにある。また、シートのサイズも正直小ぶりに感じられ、通路側には肘掛けも存在しないため少々落ち着かない。これは小型ビジネスジェットである以上は仕方のないところか。
いっぽうで前後方向には広々とした室内空間となっており、客席の後方にはトイレとお手洗いが用意されている。トイレを使用する際には、パーテーションを引き出すことでプライバシーを保つことができる。
そしていよいよ、機内最前方のコクピットへと向かう。一般的な航空機であれば、客席と運転席のあいだには立派なトビラがあるけれど、HondaJetでは客席も運転席も同じ空間だ。クルマの後席から運転席へ移動するように、片足ずつコクピットへと滑り込ませていく。
飛行機においてもっとも眺めのいい席は、やはりコクピットだ。上下にやや狭いガラスエリアの向こうには、ホンダブースを訪れている人々の姿が見える。計器類のレイアウトは完全な左右対象となっており、操縦桿も左右両席に備えられているが、これは2名による運行が必要ということではなくて、安全面を考えてのこと。右席の操縦桿を右へ倒せば、左席も同様に倒れるなど完全にシンクロするよう設計されている。もちろん目前でさまざまな情報を表示するモニターも、左右はまったく同じ画面となる。
コクピットでさまざまなスイッチを眺めていたら、あっという間に手持ちの取材時間が残り少なくなってしまった。いまや飛行機の操縦はオートパイロットが主流となっており、小型ビジネスジェットのカテゴリーも例外ではない。HondaJetエリートIIも常にアップデートはなされており、2023年末までには最新の自動化技術であるオートスロットル機能と緊急着陸装置が導入される予定となっている。
もちろんオーナーへ向けてのサポートも充実しており、アメリカ・ノースカロライナ州グリーンズボロのホンダエアクラフトカンパニーには、HondaJetを購入されるオーナーに向けてフライトトレーニングを行う専用のシミュレーターも存在しているという。
今回、展示されたHondaJetエリートIIの実機は695万ドルから。現在の為替レート(約150円=1ドル)でいうと、約10億4250万円〜となる。近年の高騰を続けるスーパースポーツカーやヒストリックカーの世界を見ていると、意外に安いと思えてしまった。購入できる気配はまるでないけれど……。