中古車業界の業績回復には消費者からの信頼回復が急務
もうひとつの、中古車業界にとっての大きな逆風は「中古車を選びたくない」というユーザー心理が増していることだ。
その原因は言わずもがな、ビッグモーターなどの大手中古車店における数々の不正がメディアで報じられたことにある。不正の内容は多岐にわたるため、けっして中古車の質が悪かったという話だけではないともいえるのだが、中古車業界への不信感を持つことになったのは疑いない。
中古車というのは、個々にコンディションが異なるため一期一会といえる商品である。素人目にコンディションを判断するのは難しいため、中古車販売店を信頼することで成り立っていたという面もある。
業界大手企業による不正が、そうしたビジネスの根幹を傷つけてしまったことで、中古車販売というビジネス自体が信頼を失った。そうなると、体力のない企業から退場(倒産・廃業)することになっているのだろう。
とはいえ、中古車業界にとって逆風が吹いているだけではない。偶然かもしれないが、2023年10月1日より中古車の販売価格表示は「支払総額」となるよう変わっている。これは自動車公正競争規約・同施行規則の改正によって定められたものだ。
これまでの中古車業界では車両本体価格だけを大々的に表示するという商習慣があった。そのため、車両価格を安くしつつ、登録などに関わる諸費用を高額として、結果的にユーザーは多くの支払いが必要になるという不当な価格表示が横行していた。
車両価格は1円だが、納車整備などの諸費用は20万円とするような話はあり得ない例に思えるが、けっして皆無ではないのがこれまでの中古車業界だったのだ。ここまで極端な例でなくとも、相場より安い車両価格表示で客を集め、高めの整備費用を計上して儲けようとする業者は少なからず存在していた。
「支払総額」表示がスタンダードとなることで、上記のようなビジネスモデルが実質的に禁じられれば、ユーザーは適切な支払総額で中古車を購入することができるようになるだろう。
中古車バブルの崩壊とビッグモーター問題というふたつの逆風に対して、「支払総額」表示によって中古車業界が信頼を回復できるかどうかが、いままさに問われている。