「リバイバルモデル」や「初代オマージュ」には何の意味がある? 当時モノの中古車じゃダメな理由とは (2/2ページ)

名車復活はクルマを思う存分に楽しめる最善策

 本当なら、当時生産されたクラシックカーを購入すべきかも知れないが、ハードルが高い。そのようなクルマには、ユーザーにも相応の運転技術、メンテナンスの知識などが求められるからだ。マニアでないと手を出しにくい。その意味でリバイバルモデルは、最新型のクルマとは異なるが、常識的に扱える。

レストア風景

 言い換えれば、昔の思い出どおりの運転感覚を味わえる。ここも大切なところだ。実際に40〜50年前のクルマを走らせると「こんな運転感覚だったっけ?」と思うことが多い。いまのドライバーは当然ながらいまのクルマに慣れていて、当時の記憶に残る運転感覚と、現存するそれとは異なるからだ。その意味でリバイバルモデルに乗ると、幻滅したり思い出を汚される心配もほとんどなく、幸せな時間を過ごせる。

 クルマが最先端技術の塊と考えれば、リバイバルは後ろ向きの発想だ。クルマである以上、デザイン、技術、運転感覚など、常に進歩を続けるべきだろう。

 しかし、もはや電動機能を搭載しないクルマに残された時間は短い。安全性や運転支援の進化は、事故を防ぐ最善の技術だが、純粋な運転する楽しさは味わいにくくなってきた。リバイバルモデルを求める気持ちは理解できる。

アイサイト

 日本車ではあまり話題にならないが、フェアレディZは初代モデルがモチーフで、リバイバルモデルの性格を併せ持つ。また、発売を予定しているランドクルーザー70は、基本設計が約40年前と変わっていない。

 2014年に一度復活したときに試乗したら、無意識にダブルクラッチを踏んでいたのには自分でも驚いた。私の体が昔の70の運転感覚を覚えていた。

トヨタ・ランクル70

 マツダロードスターのベーシックなSも、1989年に発売された初代の面影を色濃く残す。定常的なコーナーを曲がっていくと、前輪ではなく、後輪から徐々に滑り始めた。リバイバルモデルではないが、カーブを曲がるときの挙動は昔とソックリだ。

 試乗していたら、いまでは忘れていたバブル経済のころの記憶が驚くほどリアルに蘇り、ちょっと涙をこらえた。ほぼ同時期に本物の初代ロードスターを運転したときは、感覚のズレを感じたが、現行モデルのSは思い出のなかを走るロードスターそのものだ。現行ジムニーにも昔の面影がある。

マツダロードスター

 昔を懐かしむために、クルマを買う方法もあるだろう。ご同輩の皆さん、そろそろ、このようなカーライフを楽しんでも良いではありませんか。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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