F1ドライバーがスーパーGTで大活躍した例も
F1というカテゴリーのなかだけでもドライバーの評価は激しく上下する。7度の世界チャンピオンとなったルイス・ハミルトンでさえ予選Q1を突破できない時期が長くあったし、現在の最強ドライバーであるマックス・フェルスタッペンにおいてもしかり。良いチーム、速いマシンに乗れてこそ初めてドライバーの能力が活かされることが常に証明されてきている。
一方で、F1からほかのカテゴリーに移っても活躍できるドライバーもいる。2009年のF1世界チャンピオンであるジェンソン・バトンは第2期ホンダF1活動を支えた中心的なレーシングドライバーだが、ホンダチームでは活躍できなかった。当然レーシングドライバーとしての実力を疑問視される次期もあっただろう。しかし、ホンダが撤退した翌年、圧倒的強さで世界チャンピオンに輝いたのは彼の能力が優れていたことを見事に証明していて、撤退を決断したホンダにとっては皮肉な出来事になってしまった。
その後のバトンはF1で活躍できず、レーシングドライバーとしてのキャリアを終えるのではと囁かれたが、2017年から日本のスーパーGT選手権に招聘され参戦。「フォーミュラカーのキャリアしかないバトンにとって、GTマシンは難しいのでは?」と思われたが、翌2018年にはシリーズタイトルを獲得してしまう。不慣れなマシンに不慣れな日本のサーキットといった難しい状況を見事に克服し、ドライバーとしての能力の高さを見事に見せてくれたのである。
ストフェル・バンドーンやピエール・ガスリー、直近ではリーアム・ローソンといった若手ドライバーは、F1への登竜門として日本のスーパーフォーミュラを選択し、参戦初年度にいきなり優勝し、シリーズタイトルを僅差で争う実力を見せつけた。日本人ドライバーには勝つのが難しいスーパーフォーミュラでいきなり速さを見せつけ、世界のレベルが高いことを知らしめてくれたといえるだろう。
このように、速いレーシングドライバーは何に乗っても速い。フォーミュラだろうがGTだろうが、ツーリングカーでもFFもFRもRRも乗りこなす。常にそのカテゴリーで速いマシン、速いチームに加われるかどうかが重要であり、ドライバーの能力が激しく上下することはない。
なんらかのチームからオファーがあったときに、勝てるチーム、勝てるマシンであるかどうかを見極める千里眼がレーシングドライバーのマネージャーに求められ、時にドライバーはレーサー生命を終わらせられてしまうのである。