真っ白なタイヤの正体とは? 地味に凄いブリヂストンのJMSブース (2/2ページ)

「BCMA」に関する展示にも注目

 昨今は携帯の充電器などで、有線で繋がなくても充電できるものがあるが、考え方としてそれに近い。ただ、決定的に違うのは、金属製のインホイールモーターをそのまま路面に接して走らせるのは、乗り心地はもちろん、インホイールモーター自体を破損させてしまう可能性が高いため、路面(送電コイル)とモーターの緩衝材となるタイヤを挟む必要がある点だ。

 路面から発せられた電力は、タイヤ内とホイール内側に巻かれた中継コイルを介してホイール内側の受電コイルに送られる。つまり、コードなどを介して電気が送られるのではなく、磁界を発生させることで電力を伝送する仕組みで、これをワイヤレス給電と呼ぶ。ただ、このワイヤレス給電の仕組み自体は、種々企業の合同作業であって、ブリヂストンが担当するのは“タイヤというフィルター”を通して、いかにクリアな電力を中継コイルに送るかという部分である。

インホイールモーター

 ここで一番重要となってくるのはタイヤの構造材だという。ご存じのように、現在の市販車用のタイヤはほとんどがスチールベルテッド、つまりタイヤの真円性や剛性を保つために金属ベルトが編み込んであるが、これに電力を通そうとすると、電子レンジであやまって金属製品を入れたときのように火花がバチバチと起き危険極まりないそうだ。そこでこの展示の本題であり、ブリヂストンのアピールポイントにようやくたどり着く。ブリヂストンは金属ベルトのかわりに、企業秘密だという、“有機素材”で出来たベルトの開発に成功して、十分なタイヤ剛性と通電性を確保し、それが大きなブレークスルーになったというわけである。

 そしてもうひとつ注目したい展示が、「BCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)」に関するものである。クルマ自体にはすでに各メーカーが導入しているモジュール設計――少数のプラットフォームを用意し、それに用途に合わせたボディやドライブトレインを架装して、多車種を作り分けることで、多様化するニーズに低コストで対応できる――をタイヤに置き換えたもので、タイヤの骨組みとなるカーカス、補強帯にあたるベルト、表面のトレッドの3つのモジュールに集約し、これらをシェアしたり、作り替えたりすることでさまざまな性格や性能、用途などに対応するタイヤを、毎回イチから設計することなく作り分けられるのだという。これによって開発を効率化でき、安く早く良いタイヤを提供できるというわけである。

「BCMA」の展示

 いつものタイヤ論議から離れて、タイヤから考えるモビリティの未来、決して派手な展示ではないが、ブリヂストンブースを訪れてみて損はないはずだ。


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