まるでエラのようなフェンダーでついた名前が「サメブル」! いまや旧車界の「スター」610ブルーバードとは (2/2ページ)

もともと販売台数が少ないため入手は困難で相場も高め

■「サメブル」ってどんなクルマ?

「サメブル」の誕生の経緯とザックリとした特徴は先に書いたとおりですが、もう少し詳しく話してみましょう。

 まずボディです。元々4気筒エンジンを搭載するように設計されていたシャシーにあとから全長の長い6気筒エンジンを搭載することになったため、ノーズ部のみを延長して対応しました。ドアとフロントウインドウから後ろのパネルはほぼ4気筒モデルの2ドアハードトップと共通です。その結果、「ロングノーズ&ショートデッキ」のクーペ的なスタイルになり、スポーツカーの雰囲気に仕上がりました。

日産ブルーバード 2000GT-X(4代目)のサイドスタイリング

 エンジンは2種類の設定があり、どちらも2リッターのOHC直列6気筒なのは共通ですが、スタンダードの「2000GT」はシングルキャブ仕様で115馬力、上級グレードの「2000GT-X」はSUツインキャブ仕様で125馬力となっていました。

 足まわりはラリーで大活躍した先代の510系からそのまま引き継いだ、フロント:ストラット式/リヤ:セミトレーリングアーム式という構成です。旧車に詳しい人はうっすら気づいているかもしれませんが、ボディ、エンジン、足まわりと、ほぼ「ハコスカ」と同じ構成なんです。

 ただし、ハコスカは6気筒エンジンの搭載が前提の設計で、サメブルが4気筒エンジン搭載が前提の設計と成り立ちが違うため、実際に運転したときのフィーリングや特性は違うようです。以前に聞いたオーナーさんの話では、「ハコスカと乗り比べてみたら(サメブルは)すこし後ろに乗っている感じがした」とのことでした。おそらくノーズが重い重量配分のためにそう感じたのではないかと思います。

■510系と同じくラリーで活躍したの?

 先代の510系ブルーバードは、世界3大ラリーのなかでももっとも過酷なレースと言われている「サファリ・ラリー」などで優勝をしたことで、ラリーの世界大会で戦える高性能なモデルという評判を得ました。後継車種である610系も先代に引き続きラリー活動をおこない、同じく「サファリ・ラリー」でチーム優勝という好結果を残し、ラリーで強いという遺伝子を引き継いだことをアピールできました。しかし、このラリーに参戦していたモデルは、トップグレードの「GT」ではなく、4気筒モデルの「SSS」でした。

日産ブルーバード SSS(4代目)のサファリラリー出場車

 あくまでもそのデータからの推測ですが、6気筒モデルは排気量が大きくパワーで有利な面はありましたが、エンジンの重量が大きく、重心も前寄りになってしまうことで、ハンドリングの面では4気筒に及ばないという判断がされたのではないかと考えられます。

■見たことないけど、入手できるの?

 そんな「サメブル」ですが、写真では見たことはあっても、実物を見たことはないという人が多いのではないでしょうか。それもそのはず、多くの旧車が集まる各地のイベントでも、この「サメブル」はかなりのレア度なんです。もしピカピカにレストアされた「サメブル」が展示されていたら、旧車マニアの人だかりができるでしょう。

日産ブルーバード 2000GT-X(4代目)のフロントスタイリング

 それでも旧車ブームが始まった当初は認知度が低かったこともあって「不人気車」という扱いだったのですが、レア度と、ほかに似たクルマがない特徴的なデザイン、そして改造パーツが豊富なL型6気筒エンジン搭載という点が徐々に注目されるようになり、いまでは人気がうなぎ登り。しかも数が少ないという条件が相まってけっこう高い額で取引されている様子です。


往 機人 OU AYATO

エディター/ライター/デザイナー/カメラマン

愛車
スズキ・ジムニー(SJ30)※レストア中
趣味
釣り/食べ呑み歩き/道の駅巡りなど
好きな有名人
猪木 寛至(アントニオ猪木)/空海/マイケルジャクソン

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